「カシオ サステナビリティレポート2017」に対する第三者意見

当意見は、本報告書の記載内容、および同社の生産資材、人事、環境・CSRの各担当者へのヒアリングに基づいて執筆しています。
同社のCSRへの取り組みは、環境負荷削減や生産資材調達を中心としたPDCA(マネジメント・サイクル)が、トップ・マネジメント層を含む全社を挙げた取り組みに拡がることが強く期待される段階と言えます。

高く評価すべき点

  • 中長期的な環境経営方針環境マネジメントの推進体制について、「低炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」と「自然との共生/生物多様性の保全」の3項目を主題に掲げた「環境ビジョン2050」と「環境宣言2020」を2012年に定め、製品、工場・事業所、生物多様性の3分野で中長期と年度ごとの目標を定めて取り組みを進めるとともに、推進体制も3項目の主題に連動する形で再編されていること。今後は、新拠点開設時の環境負荷増大分を他の拠点における削減で補う努力や、カタログ用紙における森林認証を受けた紙の使用の比率を着実に高めること、さらに、スーパーグリーンスター制度の活用を通じて、顧客に最適な利用方法をナビゲートし、SNSなどを介して顧客同士の情報共有を促し、廃棄時のリサイクル率を向上するなど、顧客を巻き込んだ取り組みも促して、使用段階での環境負荷削減を含めた中長期目標の実現を引き続き強く期待します。
  • 全社的なCSR推進体制について、「人権尊重に関する基本方針」と独自の「人権チェックツール」を制定し、グループ各社の人権課題チェックへの回答の集計結果に基づくフィードバックを継続していること、また、「贈収賄禁止ガイダンス」と「贈収賄禁止マニュアル」を定め、海外グループ会社における取り組みの実態把握にも着手したこと、公益通報制度の利用件数を開示していること。今後は、これらのガイドラインやツールが現場においてさらに有効に活用されるよう、管理職層の目標や評価基準への組み込み、CSR推進リーダー制度との連動を含め、日常のマネジメントにおける推進体制が整備されることを強く期待します。
  • 資材調達先のCSRへの取り組みについて、環境負荷削減や働く人々の人権への配慮・対応などを5段階でたずねるアンケートを継続し、国内外555社すべてから回答を受け、集計結果に基づきフィードバックするとともに、中国・タイで計13社に訪問調査を行い、資材調達方針説明会にて表彰・事例紹介するなど、把握と可視化を続けたこと。今後は、調達先の自己評価にデータなど検証可能な根拠の明示も求め、工夫や課題の可視化と具体的な把握を進めて、改善に向けて交流する体制が進化することを、引き続き期待します。

取り組みの進捗を評価しつつ、さらなる努力を求めたい点

  • また、グループ全体におけるCSR推進基盤の形成についても、国内外の主要各社にCSR推進リーダー配置の準備を進めていることを評価しつつ、今後は、推進リーダーによる現場レベルでの取り組みを促すためにも、経営層からのメッセージを多言語に翻訳して世界各国の現場に伝え、現場で働く従業員が、本社や各国の拠点での動向を早期に、かつ深く理解する機会が増えること、また、経営層がCSR推進の必要性と有効性を継続的に学ぶ機会づくりに、強く期待します。
  • 生物多様性の保全について、国内の主要拠点で調査を実施したこと。今後は、調査結果をもとに従業員が積極的に参加する取り組みが推進されること、また、2011年に策定されたガイドラインの各項目にKPIを設けるなど、現場の日常のマネジメントにおける実践にも落とし込まれるよう、引き続き強く期待します。

一層の努力が求められる点

  • グループ全体の人的多様性の向上と活用について、方針・目標・計画や推進責任者が設けられておらず、グローバル人事会議も開催されていないことを憂慮します。今後は、2020年代に向けた、部門・法人の枠を超えたグローバルな人的ポートフォリオの想定を具体化し、世界各地で採用された人々の育成・交流・評価を統合的に推進する体制や、各国のナショナルスタッフも把握できる人材データベースの拡充など、人的な多様性を積極的に活用できる戦略と体制の整備が進むことを期待します。
  • 障碍を持つ従業員の雇用について、法定雇用率をようやく上回ったことを評価しつつ、今後も、四半期ごとの定期面談の実施や時差通勤制度の導入によって改善を進めるとともに、障碍の種別や職種などに基づくコミュニティづくりを進め、働き続けやすさの向上が促されることに、引き続き強く期待します。
  • 本報告書の記述内容として、環境負荷削減に関するデータについては、グループ会社を含む国内外の主要拠点の詳細を紹介していることを評価しつつ、環境以外、特にガバナンスおよび人事・調達関連の非財務項目について、グループ各社を含む取り組みやデータを積極的に紹介し、総合的な報告書としての精度を高めることを、引き続き強く求めます。

IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人

IIHOE:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に1994年に設立されたNPO。主な活動は市民団体・社会事業家のマネジメント支援だが、大手企業のCSR支援も多く手がける。

http://blog.canpan.info/iihoe/ (日本語のみ)

IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者  川北 秀人様の写真です。