「カシオ サステナビリティレポート2016」に対する第三者意見

当意見は、本報告書の記載内容、および同社の生産資材、人事、環境・CSRの各担当者へのヒアリングに基づいて執筆しています。
同社のCSRへの取り組みは、環境負荷削減や生産資材調達を中心としたPDCA(マネジメント・サイクル)が、トップ・マネジメント層を含む全社を挙げた取り組みに拡がることが強く期待される段階と言えます。

高く評価すべき点

  • 中長期的な環境経営方針について、「低炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」と「自然との共生/生物多様性の保全」の3項目を主題に掲げ、温室効果ガスについては2020年度と2050年度の目標を掲げるとともに、包装や物流まで環境負荷削減を拡げていること。特に紙の調達方針について、現地法令を順守し、森林破壊や重大な環境・社会問題にかかわる企業との取引を回避しつつ、認証紙や再生紙を優先していることを、高く評価します。今後も、グリーンスターおよびスーパーグリーンスター制度の活用を通じて、顧客に最適な利用方法をナビゲートし、顧客同士の情報共有を促し、廃棄時のリサイクル率を向上するなど、顧客を巻き込んだ取り組みを促すことで中長期目標の実現を具体的に加速することを引き続き強く期待するとともに、主要拠点の周辺の生態系調査を通じて、従業員が積極的に参加する生物多様性保全の取り組みの推進に期待します。
  • 資材調達先のCSRへの取り組みについて、環境負荷削減や働く人々の人権への配慮・対応などを5段階でたずねるアンケートを継続し、国内231社、中国247社、タイ59社から回答を受け、集計結果に基づきフィードバックするとともに、中国・タイで計15社に訪問調査を行い、集会時に表彰・事例紹介するなど、把握と可視化を続けたこと。今後は、調達先の自己評価にデータなど検証可能な根拠の明示も求め、工夫や課題の可視化と具体的な把握を進めて、改善に向けて交流する体制が進化することを、引き続き期待します。
  • 従業員の働き続けやすさの向上について、育児・看護・介護のための休業・短時間勤務の利用者が、カシオ計算機において6.04%に達すること、また、労使協議によって健康や介護・育児の支援を拡充したこと、事例紹介を含む介護に関する勉強会に計350名近くが参加したことを高く評価しつつ、今後は、介護支援制度の利用促進と事例紹介をさらに進めるとともに、「なんでも相談」の機会が積極的に設けられること、また、男女の勤続年数差が是正されるための合理的な取り組みが進むことに期待します。

取り組みの進捗を評価しつつ、さらなる努力を求めたい点

  • 全社的なCSR推進体制について、「人権尊重に関する基本方針」と独自の「人権チェックツール」を制定し、グループ各社の人権課題チェックへの回答の集計結果に基づくフィードバックを進めていること、また、「贈収賄禁止ガイダンス」と「贈収賄禁止マニュアル」を定め、海外グループ会社における取り組み推進にも着手したこと、公益通報制度の利用件数を開示していることを評価しつつ、今後は、これらのガイドラインやツールが現場においてさらに有効に活用されるよう、管理職層の目標や評価基準への組み込みやCSR推進リーダー制度との連動を含め、日常のマネジメントにおける推進体制が整備されることを強く期待します。 また、グループ全体におけるCSR推進文化の醸成についても、国内外の主要各社にCSR推進リーダー配置の準備を進めていることを評価しつつ、今後は、推進リーダーによる現場レベルでの取り組みを促すためにも、経営層からのメッセージを多言語に翻訳して世界各国の現場に伝え、現場で働く従業員が、本社や各国の拠点での動向を早期に、かつ深く理解する機会が増えること、また、経営層がCSR推進の必要性と有効性を継続的に学ぶ機会づくりに、強く期待します。
  • グループ全体の人的多様性の向上と活用について、海外を含めたグループ全体の人事ガバナンス方針に基づき、販売・生産両部門が参加するグローバル人事会議が開催されたことを評価しつつ、今後は、2020年代に向けた、部門・法人の枠を超えたグローバルな人的ポートフォリオの想定を具体化し、世界各地で採用された人々の育成・交流・評価を統合的に推進する体制や、各国のナショナルスタッフも把握できる人材データベースの拡充など、人的な多様性を積極的に活用できる戦略と体制の整備が進むことを期待します。
  • 障碍を持つ従業員の雇用について、法定雇用率をようやく上回ったことを評価しつつ、今後も、四半期ごとの定期面談の実施や時差通勤制度の導入によって改善を進めつつ、障碍の種別や職種などに基づくコミュニティづくりを進め、働き続けやすさの向上が促されることに、引き続き強く期待します。

一層の努力が求められる点

  • 本報告書の記述内容として、環境負荷削減に関するデータについては、グループ会社を含む国内外の主要拠点の詳細を紹介していることを評価しつつ、環境以外、特にガバナンスおよび人事・調達関連について、グループ各社を含む取り組みやデータを積極的に紹介し、総合的な報告書としての精度を高めることを、引き続き強く求めます。

IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人

IIHOE:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に1994年に設立されたNPO。主な活動は市民団体・社会事業家のマネジメント支援だが、大手企業のCSR支援も多く手がける。

http://blog.canpan.info/iihoe/ (日本語のみ)

IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者  川北 秀人様の写真です。