多様な生きものが息づく豊かな自然環境を守りたい
~「プロトレック」の環境貢献~

20年以上にわたり、自然を愛するユーザーから支持されてきたアウトドア腕時計「プロトレック」。カシオではこのブランドを通した環境貢献として、公益財団法人日本自然保護協会とのコラボレーションのもと、生物多様性保全と関わりの深い生きものをテーマにした商品開発に取り組んでいます。2018年に発売した「イヌワシ」をモチーフにしたモデルに続き、2019年には「オオルリシジミ」をモチーフにしたモデルを発売。日本の山で失われつつある生態系にスポットを当てました。本プロジェクトを中心になって進めた事業戦略本部時計 BUの中村剛士と、日本自然保護協会の岩橋大悟氏による対談を行いました。

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左より日本自然保護協会の岩橋大悟氏、事業戦略本部 時計BUの中村剛士の写真です。
左より日本自然保護協会の岩橋大悟氏、事業戦略本部 時計BUの中村剛士

新たな価値提供を目指した
コラボレーション

――2つのコラボレーションモデル誕生までの経緯とは?

岩橋氏 日本自然保護協会は、全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けるNGOです。当会の役員がカシオの時計事業の方とお付き合いがあり、両者の強みを活かして何か新しいことができないかと話が進んだのが最初のきっかけでした。当会の3万人の会員や寄付サポーターは自然が好きでアウトドアに親しむ人も多く、プロトレックとは親和性が高いという背景もありました。

中村 1995年の初代モデルから20年以上にわたり、アウトドアウオッチとして信頼を得てきたプロトレックと日本自然保護協会さんとのコラボレーションはお客様へ自然や環境に関する分りやすいメッセージを発信できると思いました。ただ、日本自然保護協会さんは日本でも有数の環境保護団体となりますので、注力する環境活動も多岐にわたります。コラボレーションにあたっては、日本自然保護協会さんが何を重視し、どのような取り組みを進めているかを理解することで、目指す方向性を共有していきました。

岩橋氏 全国で約3,600種といわれる絶滅危惧種とその生息地の保全は私たちの主要なテーマのひとつです。議論を重ねる中でそれらのテーマをプロトレックのモチーフとする案にたどり着きました。最初のモデルとなったイヌワシは、当会が2014年から群馬県みなかみ町の「赤谷の森」で生息環境の再生に取り組む絶滅危惧種で、7年ぶりに幼鳥が巣立つなど、一定の成果も見られてきたタイミングでした。

中村 「イヌワシが生息できる自然環境を守る」というシンプルなシンボルを持つことで、商品のテーマやデザインが分かりやすくお客様に伝わります。第二弾では女性ユーザーも意識し、日本の草原に住む代表的な蝶でありながら、今では熊本と長野の一部地域にしか生息しない絶滅危惧種のオオルリシジミに焦点を当てました。これらのコラボレーションモデルの開発を通して、プロトレックを購入して頂くお客様だけでなく、プロトレックに触れる機会のある皆様に自然や環境を考えるきっかけを作ることができればという思いがありました。

イヌワシをモチーフにしたモデルPRG-330GE-5JRの写真です。
イヌワシをモチーフにしたモデル
PRG-330GE-5JR
オオルリシジミをモチーフにしたモデルPRG-330SD-2JRの写真です。
オオルリシジミをモチーフにしたモデル
PRG-330SD-2JR

自然環境を考える
ユーザーの「起点」を創造

――コラボレーションを通し、どのような環境貢献を目指しましたか?

中村 日本自然保護協会さんを通し、イヌワシやオオルリシジミの保全活動をサポートできればと考えておりますが、私たちが重きを置くのはむしろ、「自然環境について考えるきっかけをユーザーに提供する」という点です。腕時計は身近なアイテムだけに、普段それを身に着けることで自然や環境を意識する機会は自然と増えるでしょう。周りの人から「その時計、何?」と聞かれ、イヌワシやオオルリシジミの話題から生物多様性について会話が広がっていくかもしれません。この商品で私たちが「創造」した一番重要なものは、ユーザーが自然環境に関心を向ける起点だったと思います。

岩橋氏 より多くの人に自然保護の意識を高めてもらうことは、当会でも大きな課題です。カシオさんのような企業がきちんと売上をあげながら、自然保護につながる製品を展開していくことは大きな可能性を広げるでしょう。単純に「カッコいい」と思って購入した腕時計がイヌワシの住む自然環境の保護につながっていると知ったら、さらにカッコよく感じる。こうした流れは、社会を変えるムーブメントを起こしていくためには大切だと思います。

中村 ユーザーに魅力を感じてもらえるよう、デザインには本当に議論を重ねましたね。例えばオオルリシジミのモデルでは、バックライト点灯時に、オオルリシジミの成長過程のイメージが浮かび上がります。長い期間を蛹として過ごし、5~6月の短い間だけ草原を舞うこと、幼虫はクララという植物のみを食べて成長することなど、細部までこだわって表現しています。

岩橋氏 第一線の研究者にも加わってもらい、実際の生態を反映した「本物」を見せることにこだわり抜きました。そしてその背景には「本物」の自然保護活動があることも重要な点です。イヌワシとオオルリシジミは自然保護にとってはあくまでシンボルです。これらが生息する環境には豊かな生態系が広がり、保護すべき価値があることが科学的にも明らかになっています。イヌワシとオオルリシジミだけを守りたいのではなく、その生息地を守ることで豊かな自然環境を保全するというのが大前提にあります。

日本自然保護協会の岩橋大悟氏の写真です。

事業を通したさらなる環境貢献へ

――プロジェクトに感じる手ごたえと、今後への展望を聞かせてください。

事業戦略本部 時計BUの中村剛士の写真です。

中村 お客様からの反響は大きく、販売実績を見ても2つのモデルは非常に好評をいただいています。社員や取引先の間でも、プロトレックは単にアウトドアで役立つ時計ではなく、自然環境のことをきちんと考えるブランドという認識が進みました。さまざまなステークホルダーの期待に応える高い価値を実現できたことが一番嬉しいです。

岩橋氏 コラボレーションモデルの発売は、活動地の地方紙でも一面で取り上げられるなど注目を集め、現地で保全活動に取り組む皆さまも大変喜んでくださっています。カシオという大きな企業が自分たちの取り組みに注目し、大事に守ってきたイヌワシやオオルリシジミが腕時計になるというインパクトは大きかったのだと思います。当団体の活動は地域の方々なくしては成り立たず、皆さまに喜んでいただけたことに深い意義を感じます。

中村 今後に向けては、まず「継続していくこと」が大事だと考えています。2モデルで終わらせてしまうことなく、日本自然保護協会さんと共に次の新しい商品をつくり、お客様へメッセージを発信し続けていきたいと考えております。さらに、カシオが進める「コトづくり」の視点からは、社内の関連部門とも連携して、社員やその家族を巻き込んだボランティア活動や、ユーザーを迎えた自然環境保全のイベント開催といった展開も考えられるのかもしれません。

岩橋氏 主要事業のひとつである時計でこうした環境テーマに取り組み、事業部の方が先頭に立って実践していく姿は、まさにカシオさんの「創造 貢献」という理念の体現なのだと思います。継続は本当に大切だと私も感じており、今後もより良い未来を一緒に考えるパートナーであり続けたいです。