環境トップコミットメント

事業と連動した環境活動を通し、企業価値の向上を目指します

中長期視野からグローバルな環境課題に取り組む

カシオでは、2050年を見据えた長期的な環境経営方針「カシオ環境ビジョン2050」のもと、「低炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」「自然との共生」という3つの環境マテリアリティを定め、持続可能な社会への貢献を目指しています。また、長期ビジョンを受けて2030年度に向けた中期目標を設定し、年度ごとの行動目標に基づく環境活動を推進しています。

昨今、環境対策は国境を越えたグローバル課題として、国際社会が取り組みを加速させています。2015年には国連での「持続可能な開発目標」(SDGs)の採択と、世界の平均気温上昇を産業革命から2℃未満に抑える「パリ協定」の合意という、時代の流れを変える出来事がありました。それを受け、パリ協定の「2℃目標」に整合した企業目標を定めるSBT(Science Based Targets)や、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うRE100(Renewable Energy 100%)などの国際イニシアチブへの注目が高まり続けています。出遅れていた日本でも、その加盟企業が急増するなど風向きが変わってきています。

今日求められるのは、そうしたグローバルな流れを注視しながら、環境への取り組みを事業運営に組み込んでいくことです。現在、カシオでは各事業とSDGsの連携を模索していますが、3つの環境マテリアリティ「低炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」「自然との共生」は、SDGsの目標6(安全な水)、目標7(エネルギーをクリーンに)、目標12(つくる責任)、目標13(気候変動への対策)、目標14(海の豊かさ)、目標15(陸の豊かさ)などと密接にかかわり、今後の事業計画の中でも考慮すべき重要な鍵となるでしょう。

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執行役員 サステナビリティ推進部長 小林誠

また、超長期の視点が欠かせない温室効果ガス排出量削減については、2017年2月に従来からさらに高い目標へと改定し、「2050年度までに2013年度比80%削減」を掲げました。あわせて中間目標も見直し、パリ協定を受けた日本政府の目標と足並みを揃えて、「2030年度までに2013年度比26%削減」としました。これは極めてチャレンジングな目標であり、達成に向けてカシオは全社であらゆる事業を見直し、環境施策を強化していく最中にあります。「0→1」を生み出してきたカシオが、その創造性を活かした独自の取り組みで環境に貢献していくことは、間違いなくカシオの企業価値向上につながっていくと考えています。

3つの環境マテリアリティを全社で推進

カシオでは、3つの環境マテリアリティを全社的な枠組みの中で推進していくため、環境マネジメントシステム(EMS)を刷新し、2017年4月より新体制での運用を進めてきました。この中で、従来は本社、羽村技術センター、八王子技術センターの3つの主要拠点で個別に認証登録していたISO14001を統合し、最新規格となる2015年改訂版の認証を取得しました。また、3つのマテリアリティそれぞれに紐づいた3委員会を設置し、部門を超えて目標・目的を全社で共有した、マクロ視点での取り組みを強化しています。

「低炭素社会の実現」では、製造・物流工程での温室効果ガス排出量を正確に把握し、削減ロードマップの作成につなげていくため、事業所の省エネ診断を進めてきました。国内においては3つの主要拠点のなかでも、1979年に開設した羽村技術センターで建物・設備の老朽化が進んでおり、施設全体のエネルギー効率に大きな課題があります。すでに建て替えが必要な時期に入っており、いかにそこに環境施策を組み入れていくか検討を重ねるところです。

また、「2050年度までに2013年度比80%削減」という長期目標はスコープ1およびスコープ2(国内・海外の生産拠点とオフィス拠点の活動)を削減対象とするものですが、当社の事業を取り巻く排出量の約8割はスコープ3(調達先の製造現場などを含めたサプライチェーン上の活動)が占めているのが実際です。この事実をいかに捉え、向き合っていくかは今後への活動の大きな鍵となっています。

製品を通したエネルギー削減も重要です。従来から取り組んできた省エネルギーな製品開発に引き続き注力するとともに、カシオ製品を活用することで削減できる温室効果ガス排出量にも目を向けていく必要があります。例えば、カシオでは2018年3月に「2.5 D プリントシステム」の販売を開始していますが、これは金型をつくることなく専用のシートに木、布、石、金属などの素材の繊細な凹凸や色合いを表現できるものです。さまざまなデザイン試作を大幅に効率化することは、モノづくり工程での消費エネルギー低減に貢献できるでしょう。今後は、こうした新しい考え方にも踏み込み、製品・技術を通した貢献を再定義していきます。

「資源循環型社会の実現」では、製品の環境負荷を最小にするため、企画、デザイン、設計の各側面から環境に配慮した商品開発に引き続き取り組んできました。基準を満たした「カシオグリーンスター製品」「カシオスーパーグリーンスター製品」は2017年度には売上比率69%を達成し、引き続き積極的に新規開発を進めていきます。

一方で、目標設定において「製品を通した資源循環」「工場・事業所での資源循環」の2つの区別が明確ではなく、製品面では従来の流れを汲んだ取り組みとなっていることから、進捗管理に曖昧さがあるという課題も見えてきました。現状を適切に把握した上で、KPIを再考しなければなりません。

「自然との共生」では、当社の生物多様性ガイドラインに基づき、2017年度には事業所ごとの生物多様性調査を完了しました。現在はその分析のもと、マーケティングや販促と連動させた事業の可能性を探る段階です。カシオは、アウトドアウオッチをはじめ自然の中での活動に豊かさをもたらすブランドとして存在感を示してきた企業であり、カシオらしい貢献の形で「自然との共生」を模索していきます。

さらに、商品カタログやパッケージへのFSC®認証紙の利用拡大にも継続して取り組んできました。国内向け商品カタログ用紙では使用比率65%まで切り替えが進んできたものの、単に「FSC®認証紙を使う」こと自体が目的化してしまうのでは不十分です。カシオの「紙の調達方針」に基づいた紙の利用が森林資源の保護や生物多様性保全につながっていることへの認識を深め、それを企業価値向上と結びつけて社内外に的確に発信していくことが大切です。

EMS新体制のもとで見えてきた今後の課題

新たなEMS体制のもとで取り組んだ初年度を経て、2030年に向けた中期目標を達成し、「カシオ環境ビジョン2050」を目指していく流れは整ったと感じています。その反面、一部では想定したパフォーマンスを出せていないなどの課題も出てきました。ひとつには、部門別の取り組みだった従来の体制を改め、委員会制に移行したことによる難しさがあります。3委員会の設置によりマテリアリティを機軸に全社的な環境活動を考える視座ができた一方、委員会が各部門を強力にリードしていくにはまだまだ組織力が不十分といえます。委員会のリーダーシップ発揮のための仕掛けづくりが求められています。

また、マテリアリティの特定から3年が過ぎ、外部環境の変化により目標自体が現状にそぐわない側面も出てきました。例えば「低炭素社会の実現」を掲げるものの、世界はもはや「低炭素」ではなく「脱炭素」に向けて動き出しています。マテリアリティそのものの妥当性を精査し、目標や KPI を見直した上で、EMSをより高い次元で推進していけるよう施策を打ち立てていかなければなりません。

サプライチェーン全体での影響を考えることも不可欠です。カシオは事業特性上、もともと極端に環境影響の大きい拠点や事業プロセスをもちません。そうした中で温室効果ガス排出削減や資源循環、生物多様性保全を追求していくためには、当社に製品を供給するサプライヤーとの連携が極めて重要です。これまでにも一次サプライヤーに対しては、CSR調達の観点からRBA(責任ある企業同盟:旧EICC)のアンケートを実施してきましたが、現状を把握した上でそこにどう影響を与えていくかが問われています。

多様なサプライヤーから理解を得て、同じ目標に向かっていくために必要なのは、取り組みの意義を「カシオからの要請」ではなく、「社会の大きな枠組みの中で当然に求められること」として訴えていくことだと考えます。温室効果ガス排出量の削減においても、それが今日のグローバルな潮流の中で不可欠なのは明らかであり、当然のこととして一緒に取り組んでほしい、という点を明確に打ち出していくことが肝要です。

そのためには、まず当社自身が環境対応への姿勢を示さなければなりません。全社を挙げた取り組みを推進していく決意表明として、国際イニシアチブであるRE100やSBTへのコミットは強い力を持つでしょう。世界基準でのより戦略的な環境貢献に向け、その加盟を目指していきます。

さらなる環境経営の進化に向けて

近年では、機関投資家の皆様との対話においても、環境対応への関心の高まりを感じます。反面、カシオのさまざまな施策について「それは単なるリスク対応と何が違うか」といった指摘を受けることも少なくありません。個々の取り組みが、それをしなかった場合に起こりうるリスクの予防となるだけでは不十分で、カシオならではのプラスの価値創造が求められていることを実感します。

社外だけではなく社内に向けても、「カシオの企業価値に結びついている環境への貢献」を明確にし、その意義や重要性への理解を促していく必要があります。従業員だれもが自分事として腹に落とし、行動に移していけるよう、日々の事業活動と関連づけたストーリーを描いていくことが欠かせません。

国際社会が共通のゴールとして掲げるSDGsは、カシオが目指すものをグローバルな潮流に重ねて表現し、全社が意識を合わせていくために大いに活用できるでしょう。現在は、SDGsに関わる社会課題がカシオの持続的成長にとってどのような機会とリスクをもたらすか、洗い出しを進める段階です。まずはそれをやり遂げ、その上でSDGsと事業との連携を図っていきます。取り組み主体となるのは従業員一人ひとりにほかならず、SDGsやマテリアリティに結びつけた行動変革を促す仕組みも検討していきます。

2018年6月の全社的な組織改革において、CSR部門とガバナンス部門を合流させた「サステナビリティ推進部」を新設しました。同本部は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を活かし、カシオの企業価値を戦略的に高めていく役割を担うこととなりました。

新組織のもと、私たちはこれまでの取り組みの進捗と課題をあらためて整理・分析し、グローバル課題への対応力をいっそう高めていきます。全社横断的にEMSの機能を最大化することで、環境経営を進化させ、「カシオ環境ビジョン2050」を着実に目指していきます。