教育事業を通じた貢献
カシオのEdTech事業ステイトメントは「Boost your Curiosity」です。
学びの原点は好奇心であり、好奇心によって興味が生まれます。これらは人生を豊かにする大切な要素であると、私たちは信じています。
このステイトメントのもと、現場のニーズと時代に対応した教育ツールを開発・提供することで教育貢献をすすめています。
関数電卓を通じた数学教育支援:「GAKUHAN」活動
カシオは、世界100ヶ国の教育現場に関数電卓を提供しています。カシオの使命は、製品の提供にとどまらず、その先にいる教育現場の先生や生徒たちを支援することで、その国の政府が必要とする人材を育成し、ひいては子供たちの「大学に入りたい」「医者になりたい」「エンジニアになりたい」といった夢の実現を手伝うことと考えています。
日本では理数系の大学生が使うものというイメージが強い関数電卓ですが、学校教育で関数電卓を取り入れている国は数多くあり、米国や欧州、オーストラリアなどの中学・高校ではほとんどの生徒が関数電卓を使っています。この背景には、世界の数学教育の変化があります。複雑な計算をテクノロジーに任せれば、問題解決能力や考える力を養うことに集中できるなど、IT社会において統計やプログラミングを学ぶうえでは、テクノロジーの力が不可欠との認識が拡大していると考えています。
関数電卓を購入しても、正しい操作方法を知らなければ、授業や試験で活用することができません。そこで、カシオは世界各国で先生や生徒を積極的にサポートする「GAKUHAN」活動を30年以上前から行ってきました。「GAKUHAN」活動では、教員向けのトレーニングや教材提供、学力向上を実現するためのパイロットプロジェクトなどを展開し、より良い教育と学習環境構築に向けた支援を行っています。
この活動を下支えしているのが各地域の学習指導要領や言語、カリキュラムに応じてカスタマイズを適える製品開発です。"学びをサポートする"本物の教育機器の開発を目指し、エンジニアが学校を訪問、授業を受講して現場ニーズを把握し、製品仕様に反映するなどして、各国地域ニーズに即したローカライズモデルを開発。現在、19地域に対応した72モデル※を展開しています。開発・生産面で少量多品種に適したLSIの構築や自動化生産などを通じて、短サイクルでカスタマイズを可能とすることで教育現場のニーズに迅速に応えます。
「教育現場のニーズにこだわる製品開発」と考える力を養うための教育環境サポート活動「GAKUHAN」の成果もあり、欧米ではすでに関数電卓とその操作方法が浸透しており、近年その軸足はASEAN諸国をはじめとした新興国へと移りつつあります。
※数学自然表示搭載の関数電卓のみ(2024年6月30日現在)
世界各国の教える人に向けた「カシオの教師研修体制」
世界ではテクノロジーの土台となる理数教育を注視したカリキュラムの改革が進んでいます。それを支えている一つがカシオの教師トレーニングです。リージョナルトレーナーを育成する「マスタートレーナー」(カシオ協力教師)の派遣から、一人ひとりの教師が関数電卓を使用した授業を行うことができるようになるまで、徹底的にサポートします。
関数電卓を使った数学授業をサポートするオリジナル教材
「カシオ・エッセンシャル・マテリアル」
関数電卓の使用状況は国や地域によってさまざまです。カシオは、「関数電卓を使ったことがない」「使っているが制限されている」「正しく使われていない」といった状況を改善するために、オリジナルの教材を開発しました。高校数学の全単元を網羅し、関数電卓の導入と活用をサポートします。生徒が関数電卓を適正かつ十分に理解し使いこなすことで、数学への理解と興味を深めることができます。
教師にとっては、副教材として授業で必要な関数電卓の使い方を知ることができます。
国や地域と連携し、学ぶ人の未来につながるプロジェクトを進めています。
各国の事情に寄り添いながら総合的に学習環境を構築することで、その国ごとの課題をクリアし、子供たちに最適で質の高い数学教育環境を届けます。
EDU-Portニッポン
エジプト、バングラデシュにおける数学教育事業が文部科学省のプロジェクトに採択
「EDU-Portニッポン」は、官民協働で取り組む、日本型教育の海外展開を推進する事業です。
現在進行中のインドネシア、タイでのプロジェクトに加えて、今回、当社がエジプト、バングラデシュ両国で取り組んでいる「GAKUHAN」活動が評価され、新たに採択にいたりました。
両国の教育省・教育関係者と連動しながら、関数電卓を活用した数学授業を開発し、教師トレーニングやパイロット授業を通じて教育現場の支援を図ります。
エジプトにおけるプロジェクトの主な取り組み
2016年にエジプトは持続的開発戦略「エジプトビジョン2030」を掲げ、暗記型の学習から脱却し、探究型学習を目指す新しい教育改革プロジェクト「エデュケーション2.0」を始動しています。2024年9月に実施された前期中等教育の7年生(日本の中学1年生に相当)のカリキュラム改定と連動して、新カリキュラムを念頭に置いた教員と生徒が探究型学習を体感できる数学の指導パッケージを提供しております。初年度は私立校2校に対し関数電卓を活用した教材の提供、数学教師のトレーニング、パイロット授業の実施、授業のモニタリングや効果測定などトライアルで実施し、2024年10月以降は対象エリアを拡大し教育現場の支援を行う計画です。
バングラデシュにおけるプロジェクトの主な取り組み
バングラデシュでは8、9年生から数学の授業で関数電卓を使用するのが一般的ですが、先生と生徒の授業中の使用状況からはより効果的な活用が期待できます。
生徒が数学を通じてより社会の事象を身近に感じることができるよう、日常生活に沿った関数電卓を用いて解く問題が充実した教材の提供、数学教師のトレーニング、パイロット授業の実施、授業のモニタリングや効果測定などをトライアルで実施します。その後、対象校数や地域を拡大する計画です。
ナイジェリア専用関数電卓発表会を開催
ナイジェリア・ラゴス州における官民連携のGAKUHAN活動の成果
カシオはナイジェリア・ラゴス州政府教育省と連携し、探究型学習における関数電卓の有効性を実証するプロジェクトを実行し、2023年5月の「ラゴス州教育カンファレンス」において同プロジェクトの成果を発表し、州教育大臣より官民連携の成功事例として賞賛を受けました。
その成果を踏まえ、ラゴス州政府教育省や現場の教師の意見を元に、ナイジェリア専用関数電卓を開発し、2024年6月に、同電卓「fx-9910NG PLUS 2nd Edition」の発表会を開催致しました。この電卓は、ラゴス州政府教育省の認証も取得しており、模倣品の生まれにくい専用機の販売により、模倣品対策になることも期待しております。
国際物理オリンピック2023に協賛
物理学を愛する子どもたちの夢の舞台を応援
国際物理オリンピックは、各国の高校生以下の若者たちが物理学の競技に挑むと共に、国際交流を通して物理学の発展を目指す大会です。2023年は東京で開催され、カシオの関数電卓「ClassWiz fx-82CW」が提供されました。コンテストに参加した84カ国、392名の子どもたちはfx82CWを使用して難問に挑みました。このイベントをきっかけに、子どもたちがさらに大きな夢を世界で叶えていくことを祈っています。
Women Do Science
科学がすべての人にとって身近なものになるように
科学の分野で活躍する女性は、世界的にもまだまだ少ないのが現状です。カシオスペインとカシオフランスは、女子学生に科学をより身近に感じてもらうために、6名の女性科学者にスポットライトを当て、それぞれの経歴や研究を紹介するコンテンツを発信しています。若い世代にロールモデルを見せることも学びの支援と考え、取り組んでいます。
各種学術活動を支援
産学共同プロジェクトの推進や国際的な学会への参加を通じて学術活動を支援します
2020年より埼玉大学と「数学授業における関数電卓実用化とグローバル展開」を実施しています。そして2023年9月に日本の淡路島で開催されたICTMA21(第21回数学的モデリングと応用の指導に関する国際会議)において、同プロジェクトの発表の機会を提供し、カシオの協力教師であるマードック大学バリー・キセイン准教授の論文発表「中等教育での関数電卓を使用した数学的モデリングと応用」の支援を行いました。
グローバル・ティーチャーズ・ミーティング
世界の教師とその生徒たちの声が、開発に活かされています
毎年、世界各国から教師を招いて「グローバル・ティーチャーズ・ミーティング」を開催しています。どのような機能を搭載すれば生徒が理解しやすくなるか、どのような授業ができれば生徒の意欲向上に繋がるかなど、直接議論をすることにより、現場のニーズに合ったより良い教育機器やサービスを開発することができます。
「ClassPad.net」による教育現場におけるICT活用の支援
「GAKUHAN」活動と並行して、カシオはオンライン辞書などの学習コンテンツとデジタルノートを統合したオールインワンのICT学習アプリ「ClassPad.net(クラスパッドドットネット)」をICT化が進む教育現場へ提供しております。
令和6年能登半島地震では、被災した生徒の皆様や先生方の学びを止めないための支援として、カシオの教育アプリ「ClassPad.net」を希望する学校に無償提供しました。
ClassPad.netは関数電卓で培ったカシオの数式処理システムの技術をベースとして2018年から海外に向けて提供していた数学ソフトに、教育系出版社と提携したオンライン辞書、問題集、電子書籍などの学習コンテンツ、PC/タブレット端末上で使えるデジタルノート、授業支援機能を搭載したもので、全教科のICT教育、オンライン授業にご活用頂けるICT学習アプリです。
2021年4月に機能を限定したベータ版の提供を開始し、2021年9月に製品版の提供を開始しました。
これまでのデジタル学習教材は、辞書アプリなど用途に応じて複数のアプリを使い分ける必要がありましたが、ClassPad.netは、デジタルノートと学習用コンテンツの2つの機能が統合されていることが特徴で、生徒の主体的で探究的な学びを支援します。また、クラウドへのデータ保存により、先生は毎回板書やプリントの印刷をする必要が無くなり働き方改革に繋がるとともに、パソコンやタブレットなどの端末があれば、学校でも家でも利用することができ、先生・生徒間のインタラクティブな学習を実現します。生徒のノートを回収しなくて良くなる為、生徒は学びを止める事無く授業の復習をする事が可能となります。
これらの点が評価され、2024年10月には「第21回 日本e-Learning大賞」の「日本電子出版協会団体会長賞」を受賞。ClassPad.netが「日本e-Learning大賞」を受賞するのは今回で3年連続となります。
また、ユーザーに新たな教育体験を提供するため、2024年3月に、デジタル教材やAIドリルを提供する株式会社Libryを子会社化しました。お互いが強みを持つ学習コンテンツやツールを補完することで教育現場に広く馴染むサービスを提供するとともに、今後は教育ビッグデータを活用した個別最適化学習や教育アセスメントの支援を行うなど、新たな価値創造を目指します。2024年3月時点、両者のサービスを合わせて1000校以上に導入されております。(トライアル版利用校含む)
今後も学校現場との共創を通じて、教育現場のご意見を伺いながら先生・生徒に役立つサービスの創造と教育への貢献を推進していきます。