労働安全衛生
マネジメント
社会的背景
近年、過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調が社会的に問題視されている状況の中で、従業員の心身の健康の保持増進は重要な取り組みと認識しています。
産業医や医療スタッフと従業員間でのオンラインによる面談も実施しています。
カシオグループにおける労働安全衛生基本方針
従業員一人ひとりが健康で安全に働くことができなければ、能力を最大限に発揮することはできません。
そのため、下記を労働安全衛生基本方針と定め、グループ全体で安全衛生の諸施策に取り組んでいます。
カシオグループ労働安全衛生基本方針
労働安全衛生法をはじめとする各種法律や就業規則に基づき、「従業員の健康保持・増進」と「労働災害の防止・再発防止」の実現を図るため、全ての従業員が安心して働ける職場づくりをグループ全体で推進する。
カシオグループにおいては、健康診断の有所見率や高ストレス者率は全国平均に比べて低いものの、依然として一定数存在し、また平均年齢の上昇に伴い生活習慣病の予防対策や治療をしながら仕事が継続できる両立支援の環境整備も必要不可欠という課題を踏まえ、2022年から9つの重点項目を設定し各種施策を推進しました。海外グループ会社においても、当該国の法規制を遵守し、同様に対策を行っています。
健康宣言(健康経営方針)
当社では企業成長の源泉である個々の社員が力を最大限発揮するため、そのベースとしての個々の健康維持増進を目的とし、健康づくりに関する「CASIO健康基本方針」を定め、全社一丸となって健康経営に取り組んでいます。
健康経営方針
「CASIO健康基本方針」
私たちは、一人ひとりが安心して生き生きと働き、仕事を通じて最大のパフォーマンスを発揮できる職場の環境づくりを目指します。
そのために、一人ひとりが主体的に考え、健康意識の高い行動に努めます。
「健康経営優良法人2024 ホワイト500」に認定
健康経営優良法人認定制度は、2016年度から経済産業省が開始した特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
カシオグループでは常に健康への課題を見直し、一層の社員の健康維持・増進による生産性の向上に努めていきます。
上記基本方針の実現を最大の課題として認識し、先ずはベースとなる全従業員の健康意識の向上を期待する効果として推進しています。また、お取引先様へ弊社の取り組み状況などの情報をご提供することで、取り組みへのご支援を進めています。
健康経営全体の目標は、戦略マップに掲げたアブセンティーズム、プレゼンティーズム、ワークエンゲージメントの各目標の達成とします。
項目 | 目標 |
2022年 |
2023年 |
---|---|---|---|
アブセンティーズム |
労働生産休業日数率が対前年減少 |
1.20% |
1.50% |
プレゼンティーズム |
パフォーマンス不完全勤務者率 |
19.8% |
21.3% |
ワークエンゲージメント |
ワークエンゲージメント(5点満点)が3.5点以上 |
3.58点 |
3.61点 |
なお、これらを目標に設定した根拠は、健康経営で解決すべき経営課題(基本方針の実現)に最も有効であると認識しているためです。この目標達成に向けた健康経営の各施策推進は、経営課題と従業員の健康増進の両面から、非常に重要かつ効果的と考えており、施策とその効果のつながりを戦略マップに示しています。
※労働生産休業日数率=傷病による休業日数計/労働日数総計(対象3,049名の計)
パフォーマンス不完全勤務者率=Wfun21点以上の人数/Wfun受検者数(対象3,049名・回答率96.2%)
ワークエンゲージメントスコア=モチベーション調査における「活力」「熱意」「没頭」関連3設問の平均点(対象3,049名・回答率96.2%)
健康経営組織体制
①体制
CHROが健康経営の最高責任者となり、人事部門を中心に健康保険組合や各部門とも連携しながら、全社一丸となって、従業員の安全衛生および健康管理を推進しています。
人事部健康経営推進チームは、カシオ健康保険組合との充分な連携のもと、各種の健康増進施策を推進しています。また、安全衛生委員会においては、従業員からの健康経営に関する意見の吸い上げなどの取り組みを行っています。
②法令遵守
各事業所に設置された「安全衛生委員会」は会社側と組合側から選出した半々の人数の委員によって構成され、月1回従業員の安全衛生に関わる事項を審議しています。
マテリアリティのKPIと実績
2024年度目標の設定については、2023年度実績をベースとしつつ、更なる健康維持増進に向けたものとしておりますが、今後も更なる向上を目指します。
評価 ◎:すべての目標達成、○:目標をおおむね達成、△:成果より課題が残る、×:進捗なし
2023年度の目標とKPI | 2023年度実績 | 評価 | 2024年度の目標とKPI |
---|---|---|---|
健康意識の向上
|
|
○ | 健康意識の向上
|
メンタル不調者への対応取り組み
|
|
○ | メンタル不調者への対応取り組み
|
|
|
○ |
|
活動実績
健康意識の向上への取り組み
新入社員研修、階層別キャリア研修、新任マネジャー研修等で必要な知識、スキルを習得するセミナーを開催し、健康に配慮した職場環境づくりやメンタルへルスの保持増進、健康意識の向上の教育を開催しました。また、7月には診療所看護職による「健康イベント」を開催しました。本社では「体組成測定会」、羽村技術センターでは「脚力測定会」を実施し、運動習慣のきっかけづくりとして健康への関心を高める取り組みを行っています。ヘルスリテラシーに関しては、ストレスチェック実施時に合わせて調査を行いました。
項目 | 目標 |
2022年 |
2023年 |
---|---|---|---|
ヘルスリテラシー※ |
ヘルスリテラシーの点数(5点満点)が前年より改善 |
3.76点 |
3.76点 |
※Communicative and Critical Health Literacy(CCHL)尺度を用いて測定
職場活性化への取り組み
社内ポータルサイトにセミナー募集や社内に広く呼びかけるコンテンツ「つながる広場」、ライフステージを共有し同じ悩みを持った従業員同士が集まって対話をする「つながりカフェ」、またコミュニケ―ション促進・信頼関係構築・モチベーション向上のために「サンクスカード」等の取り組みを行っています。その他、プラごみの回収や農福連携など多くのボランティア活動で従業員同士のコミュニケーションを図っています。
仕事と治療の両立支援への取り組み
病気を持ちながら安心して活躍できるように、健康経営の重点項目の一つとして両立支援のサポートを実施しています。両立支援に関する社内ポータルサイトを開設し、支援体制や関連する制度の案内や担当窓口を掲載し、従業員が支援や制度を活用しやすい環境作りに取り組んでいます。医療職は両立支援コーディネーターを取得し相談対応にのっています。
女性の健康保持・増進
10月「ピンクリボン月間」、3月「女性の健康週間/国際女性デー」の年2回、従業員とそのご家族も一緒に参加可能なセミナーを開催しました。10月の当日参加者は94名(参加率3.0%)、3月の参加者は870名(参加率27.8%)でした。
3月開催の女性健康セミナーは、「全従業員向け」「管理職向け」「女性向け」の3種類の動画を配信し、より深い知識と共通理解を育みました。(女性健康セミナー満足度は、平均3.91/5点中。セミナー投資額:約70万円)
社内ポータルサイトには「女性の健康保持・増進」ページを開き、女性の健康に関する情報や社内医療職による相談窓口を設けています。
社内診療所の一角に、「女性の休憩室」を併設し、月経随伴症状の休養や復帰した女性従業員の搾乳スペースとして活用されています。
また、30歳以上の女性従業員・家族を対象に婦人がん検診(婦人がん、乳がん)の費用補助を実施しています。(利用人数:女性従業員1,399名、家族・任意継続者1,330名。投資額:約1,340万円)従業員は、就業時間内に任意の医療機関で検診を受診することができます。生理休暇制度や不妊症治療のための休職制度も実施しています。
メンタル不調者への対応取り組み
従業員のメンタル面の健康をサポートするために、2015年12月に施行されたストレスチェック制度以外に、従来より、継続的にメンタルヘルスに関する研修やサポート体系の整備を行っています。
若年層のメンタル不全率の低減を目的に、新規入社者を対象とした「eラーニング研修」や入社2年目従業員にはフォローアップ研修(ストレスマネージメント含む)を実施し、上司や同僚との関わり方やコミュニケーション能力向上に関する講義や演習を行っています。管理職層向けには、「eラーニング研修」「新任マネジャーガイダンス」の実施や、管理職向けのマニュアルを整備し、組織におけるストレスマネージメントの重要性について共有を図っています。また、常時相談ができるように、社内ではメンタル専門医、社外での相談窓口「心と暮らしのホットライン」を導入しています。社外の相談窓口は、社員の家族も相談できる体制を整えています。また、休業者への支援強化のため、ご本人、ご家族にもお読みいただける「メンタルヘルスのしおり」を配布し、休業の流れ、手続き等把握しやすくしています。今後も国内のグループ会社にも同様のサポート体制を整備し、社員がイキイキと働けるよう、支援していきます。
感染症対策への取り組み
従業員の健康への取り組みとして、感染症の予防に対応することの重要性も認識しています。社内掲示にて感染症に関する情報提供や予防の普及啓発や注意喚起をするほか、2021年から2022年にかけての13,000件の新型コロナワクチンの職域接種を実施しました。海外赴任者には事前に行われる赴任ガイダンスにて、医療職による予防ワクチン接種、現地での感染症(デング熱やマラリア、肝炎等)に関する情報提供を行い、予防対策に努めています。海外に関する感染症の流行情報については、外務省等の発信する情報の収集を行い、対象国の赴任者に対して周知・注意喚起しています。2023年度は本社・羽村技術センターにてインフルエンザの職域接種を実施、さらにインフルエンザの予防接種費用はカフェテリアプランのポイント対象としています。
長時間労働者対策への取り組み
従業員の健康管理のため、適正な労働時間管理を徹底しています。また、長時間労働による健康障害を防止するために、月80時間以上の時間外労働を行った管理職を含む全ての従業員に対して産業医との面談の実施を義務。45時間以上の方においても自主受診を促し、健康状態の確認・助言・指導を行っています。労働に起因する健康障害を未然に防ぎ、労働時間の適正化を会社として取り組んでいます。
生活習慣病対策への取り組み
定期健康診断は法定項目以外に、がん検診など社員の健康保持、生活習慣病予防のための項目を多数追加して実施し、健診受診率も毎年ほぼ100%となっています。また、40歳以上の従業員希望者は人間ドックを受診できるようにしています。事後措置についても全社でルールを統一化し、有所見者の事後措置実施率の向上を図っています。2023年度の健康診断再検査受診率は、81.7%(2023年度目標80%を達成)でした。
海外赴任者に対しても年1回の定期健康診断を義務付け、結果に基づいて医療職による指導が行われています。
また、健康意識向上と健康度に応じたインセンティブを目的として、定期健康診断結果に基づき付与されるポイントを相応の健康関連商品と交換できる「健康増進報奨制度」を行っています。
生活習慣病対策については、カシオ健保とともに「運動」「食生活」に焦点をあてたコラボへルスに取り組んでいます。特定保健指導においては長年、会社とカシオ健保との協同事業として会社医療職も保健指導に参画しています。
社員食堂では、定期的に関係者を集めた給食会議を開催し、カロリー・栄養バランスを考慮したメニューを随時提供しています。
年 | 2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
2023年 |
---|---|---|---|---|---|
適正体重維持者率※ |
67.7 |
68.0 |
68.9 |
69.7 |
69.3 |
※BMIが18.5~25未満の者
重症化対策
カシオ健保では、生活習慣病ハイリスク者(生活習慣病の服薬治療を受けているが、肥満体型かつ数値改善が必要な方)に対し、6~9カ月間の保健指導実施しています。医療職からの個別指導のほかに、食事分析アプリの活用による食事指導や宅配食の提供などを行い、減量成功率は90%・治療継続率は100%でした。
睡眠支援
カシオでは、睡眠に関する正しい知識習得のための「快眠セミナー」の開催(セミナー投資額:約16.5万円)、SAS検査の費用補助、リフレッシュルームの設置などを行っています。また、カシオ健保では、睡眠に課題をもっている方を対象に「睡眠改善プログラム」を実施しており、ウェアラブルデバイスで計測したデータをもとに、個人にあった睡眠習慣を身につけるプログラムの支援を行っています。
禁煙対策
カシオでは、禁煙に対する取り組みを全世界で進めています。国内グループ会社にて、全社敷地内を禁煙としており、就業時間中は社内外を問わず禁煙としています。5月31日の世界禁煙デーには、卒煙(喫煙習慣から卒業)という考え方に基づき、全従業員にたばこと健康に関する動画視聴と理解度確認を実施しました。また、CHROから卒煙推奨のメッセージを役員と従業員に配信しました。
カシオ健保では、インセンティブを目的とした「健康増進報奨制度」に禁煙の項目を追加しました。さらに、喫煙者を対象に「オンライン禁煙プログラム」を開催し、禁煙成功者には参加費用の全額キャッシュバックを実施するなど、積極的な禁煙対策に取り組んでいます。
年 | 2019年 |
2020年 |
2021年 |
2022年 |
2023年 |
---|---|---|---|---|---|
喫煙率 |
19.4 |
16.9 |
13.5 |
13.3 |
13.5 |
労働災害の防止
カシオは、「労働災害ゼロ」の実現に向けて、各職場で無事故・無災害を目指した安全活動を展開しています。eラーニング等も活用し周知教育を行っています。各事業所・グループ会社においても、消防訓練・防災訓練を実施し、緊急の事態に備えています。
- 震災対策(震災対策ハンドブック、サバイバルカード)、防災備蓄品の準備
- 救急対応手順、AED操作手順
- 緊急連絡/安否確認システム
職務上の労働安全衛生の危険源としては、営業車両の使用があげられ、このリスクとしては営業車両の運転による事故の発生があげられます。これに対しては、営業車両運転に関する社内研修を実施し、リスクの低減に努めています。また、安全衛生委員会では、労災発生状況を定期的に報告し、再発防止への議論を進めています。
過去5年間の労働災害(カシオ計算機)
年 | 労働災害度数率※1 | 労働災害強度率※2 | 死亡者数 | ||
---|---|---|---|---|---|
カシオ | 製造業 | カシオ | 製造業 | カシオ | |
2019年 | 0.60 | 1.20 | 0.002 | 0.10 | 0 |
2020年 | 0 | 1.21 | 0 | 0.07 | 0 |
2021年 | 0 | 1.31 | 0 | 0.06 | 0 |
2022年 | 0 | 1.25 | 0 | 0.08 | 0 |
2023年 | 0 | 1.29 | 0 | 0.08 | 0 |
※1100万延実労働時間当たりの労働災害による死傷者数で、災害発生の頻度を表す。
※21,000延実労働時間当たりの労働損失日数で、災害の重さの程度を表す。
※ここでいう労働災害とは、労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた負傷または疾病(休業1日以上)および死亡をいう。
男女別・部門別労災発生件数(カシオ計算機)
男女別件数 | 発生部門別件数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 合計 | うち休業者数 | 本社 | 開発部門 | 営業所 | |
2019年 | 3 | 6 | 9 | 1 | 1 | 0 | 8 |
2020年 | 2 | 2 | 4 | 0 | 0 | 2 | 2 |
2021年 | 1 | 4 | 5 | 0 | 1 | 0 | 4 |
2022年 | 8 | 7 | 15 | 0 | 6 | 5 | 4 |
2023年 | 6 | 4 | 10 | 1 | 3 | 2 | 5 |
※2024年10月1日更新