トップコミットメント

カシオらしさを継承し、新たな発展に向けた変革で「貢献のための創造」に挑みます

「いかに人々の役に立つか」を中心に据えた事業の必要性

2017年6月、カシオ計算機は創業60周年を迎えました。リレー式計算機からスタートを切ったカシオは、身の回りのものすべてがアナログという時代の中、デジタル技術を駆使して電卓や電子楽器、電子辞書、デジタルカメラなど画期的な製品を生みだし、暮らしを楽しく便利に変えることで成長を遂げてきました。「創造 貢献」という経営理念のもと、常識に捉われない発想で0から1を生みだすモノづくりに徹してきたのが当社の歴史です。

昨今、私たちを取り巻く市場環境は大きく変化しています。大方の製品はすでにアナログからデジタルに置き換えられ、単なるデジタル化や高機能化では新たな価値を認められなくなっています。マス市場では各社が多様な商品を発表しながらも苦戦するほか、グローバル化の進展により、世界中のどこでも同じような製品が同じような品質でつくれるようになりました。「優れたモノさえつくれば市場で勝てる」という時代はすでに終焉を迎えています。

今私たちに必要なのは、モノを生みだすことがゴールではなく、製品・サービスを通し、いかに人々の役に立ち世の中に貢献できるかを中心に考える視点です。これはコトづくりの領域ともいえるでしょう。つくり手の都合でモノを生みだす「プロダクトアウト」から、お客様や市場が何を欲し、将来どのようなニーズが起きるかを考える「マーケットイン」への転換であり、「貢献のための創造」がこれまでにも増して重要になってきているということです。

また、流通のあり方も著しく変わっています。インターネットが浸透して久しい中、お客様はWeb上で独自に情報を得ます。私たちも、「カシオだから買いたい」と言われる信頼を得るため、長年にわたり信頼関係を築いてきた流通ネットワークを一から見直し、エンドユーザーと直接的につながりあえるチャネルを創出していくことが非常に重要です。エンドユーザーと共に、社会にこれまでなかった新しい価値を生みだす「共創」の関係を築いていくことが、未来に向けたコトづくりの土台となります。

カシオ代表取締役社長 樫尾 和宏の写真です。

さらなる飛躍に向け、「カシオ創造憲章」改定へ

これまで時計事業や教育事業ではカシオらしい特徴ある展開を遂げてきた一方、それ以外の事業では市場環境への適応が十分に図れていなかったという反省があります。変化への的確な対応は、今日では企業の存続・発展の重要な鍵となっています。

60周年という大きな節目の年を迎え、私たちが今真摯に取り組むべきことは、「創造 貢献」の原点に立ち返ったカシオらしさの継承と、さらなる飛躍に向けた事業構造の改革です。私は2015年に4代目社長に就任しましたが、初代から前社長まではいずれも創業世代でした。私の就任を機にカシオは実質的に次世代に移り変わったといえ、60年という先人たちが築いてきた歴史の重みを受け止めながら、私たちは次の発展に向けた新時代を切り拓いてなければなりません。

改めて見つめ直せば、カシオらしさとは、隠れたニーズを掘り起こし、人々に驚きと喜びをもたらし、新たな文化をつくる営みの中にこそあります。高い実用性とタフネスを強みにしたG-SHOCKは各国のスポーツ文化と結び付いて進化を続け、デジタルカメラのTRシリーズは中国の若い女性たちの「自撮り」の楽しさを躍進させ、それぞれ社会現象となるほどのブームを巻き起こしました。2016年に発売したスマートウォッチでは、アウトドアに特化することで本当に必要とされる機能時計としてかつてない価値を提供しています。 当社の事業で成功を収めているものは、すべて事業国の文化に溶け込み、新たな市場を創出してきたものばかりで、これはカシオが今後も長く受け継いでいくべきものです。

60周年を機に、こうしたカシオのDNAを今一度全社で共有し、私たちが社会に提供してきた価値への認識を深めるため、現在当社では「カシオ創造憲章」の改定を進めています。 これは同時に、「私たちが何のために存在し、どこに向かっていくのか」を再定義するものでもあります。カシオのビジョンや進むべき方向性、事業ドメインを改めて明確化し、全社で取り組んでいく体制を整えます。創造憲章の改定を通して「創造 貢献」をさらに掘り下げ、カシオの精神を広く社内外へと発信し、技術カンパニーとして私たちが目指していく姿を宣言します。

社会課題の解決と事業推進の一体化のために

今後の方向性を考える上では、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」やCOP21での気候変動に関する「パリ協定」の合意など、世界的な動きも注視しなければなりません。これらは、今後10~30年のスパンで社会が解決しなければならない課題を明らかにするものです。当社にとっても多様な事業機会を生みだすものといえますが、適切に対応しなければリスクともなり得ます。

特にSDGsは、カシオが「創造 貢献」を経営理念として事業運営を続ける中、17の目標が掲げられたことにより、私たちの「貢献」のターゲットをグローバルな視点からより鮮明にできたともいえます。 例えば、電子辞書と関数電卓がリードする教育事業は、単に教育用の端末の販売を超えて、各地域の最適な教育の仕組みづくりに共に励んできました。これはSDGsの目標4(質の高い教育の提供)に該当しますし、それを通じて目標1(貧困をなくす)や目標8(持続可能な経済成長)にも関連しています。

現在、私たちは教育事業におけるゴールを「事業を展開する地域の学生の学力向上」として明確に定めています。関数電卓であれば、カシオの関数電卓を採用してくれた教育現場において、数学学習の質が高まり、数学力が高まることがゴールです。そのために、事業国の数学レベルに合った教材を提供し、効果的な学習のための仕組みづくりを、さまざまなアクティビティを含めて現地の教育省や教育現場の先生方と共に取り組んできました。

そこでは販売台数や市場シェアは付属的なものに過ぎません。数学力の向上という目標を果たし、事業国に貢献できれば自然とカシオの売り上げは伸びます。世界人口が増え続ける中で潜在的な市場は大きく、成功事例を応用し、より多くの国で教育のあり方を変えていくのが、教育事業での私たちの使命と考えます。次世代を担う学生たちの学力向上は、その国の発展にもつながるでしょう。

今後は教育以外の事業においても、SDGsを念頭に置きながらカシオの強みを活かし、「貢献のための創造」を実践していきます。そのために2017年度は、当社の事業活動がSDGsとどのように関わっているのか棚卸しを行い、SDGsがもたらす機会と責任について、役員だけでなく、全従業員が理解できるようにします。その上で、順次SDGsを事業計画と関連づけていき、計画の達成と社会課題の解決を同時に成し遂げ、さらなる企業価値の向上を目指します。

全社的なミッションを重視し、事業構造を改革する

人々に役立つ新たな価値を生みだしていくために、カシオはどのような製品・サービスに注力していくべきか。そのために事業はどうあるべきか――そのように逆算していく発想から、事業構造の改革も極めて重視します。

抜本的な見直しを進めるシステム事業では、本当にユーザーに貢献できるものに経営資源を集中していくため、2016年度にはオフィス向けのプリンター事業とOA事業から撤退しました。一方で、伝票の発行や売上集計のための事務処理システム「楽一」や、電子レジスターをベースとした売上集計管理サービスなど、小規模事業者向けのサービス強化を図ります。 カシオでは、ハンディターミナルや電子レジスターなどの業務用ハードウェアで国内外の高いシェアを得ていますが、その多くが中小企業や個人事業主のお客様です。大手事業者とは異なり、大がかりな会計等の仕組みを導入しにくいお客様に向けて、製品の売り切りではない本当に役立つソリューションを提供していくのが狙いです。経営に貢献するサービスを今後さらに充実させ、お客様が本業に集中できる環境づくりを支えていきます。

また、カシオでは長年、事業部ごとの集合体として企業がありました。ある意味で大企業病ともいえ、「カシオが全体としてどこに向かうか」という共有が不十分なまま、各部門がそれぞれの事業を個別に営んでいるのが実際でした。 縦割りだった従来の組織を見直すため、2017年2月にはコンシューマ開発本部をつくり、カメラ事業、サイネージ事業、楽器事業を横断する組織としました。3分野のノウハウと経験を組み合わせることで、例えばホームシアターのような新ジャンルでもシナジーを発揮できます。さまざまな技術を連携し、横断的に活かしていくことが重要だと考えています。

今までは部分最適になりがちだった評価制度も見直していく必要があります。各部門や個々のチーム・従業員が成績を伸ばしていくことは重要ではありますが、常にそれに先駆けて会社全体のミッションがあり、それぞれの成長は全社での成長につながるものでなくてはなりません。

全社的な視点が必要なのは、CSRの取り組みにおいても同様です。2016年度には、さまざまなステークホルダーや有識者の意見を取り入れてマテリアリティ(CSRの重要課題)を策定しており、2017年度も引き続き全社で意識を合わせて推進していきます。 また2015年度から、社内のさまざまな部門から選出した従業員を「CSRリーダー」とし、CSR浸透の核人材として育成してきました。2017年度からはこれをさらに発展させ、国内外のグループ各社へと体制を拡充していきます。

ステークホルダーと共に価値ある企業を目指す

カシオでは、幅広いステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを大切に考え、これまでにも本レポートやWebサイトなどを通し、私たちの取り組みや事業への考え方をお伝えしてきました。 一方で近年では、ESG(環境・社会・ガバナンス)の要因が、企業の持続的成長に与える影響について注目が高まり続けています。特に、機関投資家が企業の中長期的価値を判断するために、その非財務情報を重視する動きが日本でも広がりつつあります。

こうした背景を受け、本年度以降、カシオではコーポレートコミュニケーションのあり方を見直していきます。財務・非財務を合わせた統合報告書の発行を将来的に視野に入れ、ESG情報の開示をより充実させます。コミュニケーションの目的と対象を明確にした上で、それにふさわしい効果的な情報開示を推進していきます。 また、従来は複数の部門で別々に行っていたコミュニケーションツールの制作も、統合を進め、カシオとして一体感をもち、説明責任を果たしていきます。

最後に、従業員には「カシオの未来は自分たちにかかっている」という点に意識を高めてほしいと願います。全社でのビジョンや方針に無関係という部署はひとつもなく、全員がカシオの一員ということを常に胸に置かなければなりません。10年後、20年後のカシオのあるべき姿を共に考え、全員参画でより価値ある企業を目指し、一丸となって歩んでいきます。

カシオ代表取締役社長 樫尾 和宏の署名です。