羽村技術センターでの保全活動
2020年、2021年の2年間はコロナ禍による行動制限に合わせて、当社でも敷地内の希少植物の保全活動は制限されましたが、2022年からは感染リスクに配慮しながら、羽村技術センター敷地内にてキンラン・ギンランの増殖に向けた人工授粉や袋掛けの対処ができるようになりました。2023にも人工授粉と袋掛けを行いましたが、その前後で同敷地内の別の場所で、新たにキンランが2個体とギンラン1個体を発見しました。
また、数年に渡る観察の結果、キンラン等は他の植物に先駆けて2月頃に発芽するため、ダンゴムシなどの食害にあいやすいことが経験的にわかってきました。ひとたび生長点を食害されると、そのシーズンは地上部が成長することはないようです。また、2年連続して食害にあった個体でその後地上部が消失した個体もあります(因果関係は不明)。このため、発芽シーズンが近づくと地面の落葉など除去するとともに、ダンゴムシの食害を防ぐため、園芸用の粘着シートを設置しています。
このような敷地内の保全活動は、社員有志「羽村TC見守り隊」により、季節の推移や成育状況を踏まえて、概ね以下のような流れで毎年展開しています。
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キンラン・ギンラン等 |
ツミ |
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1月 |
種子保存 |
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2月 |
発芽前:観察開始/落葉等の除去 |
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3月 |
ダンゴムシ等食害の警戒対応 |
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4月 |
前年度種子の播種 |
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5月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
ツミ営巣観察開始・社内情報公開 |
6月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
観察継続・社内情報公開 |
7月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
観察継続・社内情報公開 |
8月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
巣立ち・社内情報公開 |
9月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
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10月 |
子房肥大状況観察/鳥獣害警戒 |
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11月 |
採種・種子保存・社内情報公開 |
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12月 |
種子保存 |
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2023/4/21に発見したキンラン2個体
羽村技術センターでは、建物の老朽化に伴い再建設を近い将来に予定しています。そこで、移植が必要になった場合に備えて、学術文献を参考にしてキンランの周囲に共生関係を構成しうる樹種(コナラ、マテバシイ)の幼木を植栽し、キンランとこれらの樹木をまとめて移植可能な状態となるようにしています。また、花期におけるランミモグリバエの影響を回避するため、「羽村TC見守り隊」にて毎年新たな工夫・改良を重ねています。また、花期の終盤には人工授粉を行って種子を確保し、学術文献を参考にして「種子スティック法」による播種の試みも2024年に開始しました。

キンランの子房と種子

キンラン種子の拡大写真
羽村技術センターでは、2022年に敷地内のケヤキに絶滅危惧種の猛禽類であるツミが営巣を行いました。ツミの営巣は従来同事業所の西側にある武蔵野公園内で観察されていましたが、当社敷地内の方が子育てにより適した環境にあるとツミが判断したのか?営巣場所を変更したようです。
翌年2023年にも当社敷地内の同じケヤキでツミが営巣を行い、2年連続で雛が巣立ちました。さらに、その翌年となる2024年には、敷地内の別のケヤキにて営巣と雛の巣立ちが確認されました。なお、「羽村TC見守り隊」の観察によれば、2024年は雛が巣立ったのち、その同じ巣で同じ親鳥が2回目の営巣を行ったとみられる様子が確認されています。

ツミの営巣位置

ツミの雛と親鳥