自然との共生

自然との共生考え方・方針

課題認識

2022年12月に採択された生物多様性に関する世界目標であるGBF(昆明・モントリオール生物多様性枠組）において、「2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる」ことがミッションとされており、いわゆるネイチャー・ポジティブの達成が日本をはじめとする各国の政策目標として広く位置づけられています。こうした状況の中、企業活動が自然資本に与える依存と影響を把握し、事業のリスクと機会を評価・開示することが投資家から求められています。電機電子業界では多様な部品・原材料の調達や複雑なサプライチェーンを有することから、自社固有の事業特性による依存と影響を踏まえ、適切な取り組みを見極めることが不可欠です。

カシオグループとの関わり

カシオの事業は、電卓や時計などの小型家電が中心であり、製造工程も組み立てが主となるため、グループ内での生物多様性への直接的な依存と影響は限定的といえます。しかし、バリューチェーン全体で見れば、間接的な影響が生じている可能性もあることから、業界全体との連携を視野に入れて検討を進めています。こうした取り組みと並行して、自社の組織風土や得意分野を活かし、生物多様性に対して事業活動を通じた正の影響を拡大することを意識しながら、社内外での施策に取り組んでいます。

カシオグループ生物多様性ガイドライン/「紙の調達方針」

カシオグループでは、「環境経営の強化」をマテリアリティに設定しており「自然との共生」を一つのテーマとしてきました。これまでの取り組みとしては、2011年に「生物多様性ガイドライン」を策定し、生態系の保全に配慮した事業活動を進める方針を明確にしました。また、2015年には「紙の調達方針」を定め、森林資源の持続可能な利用を推進してきました。これらの方針では、全員参加による活動を目指すことや、サプライチェーン全体での環境配慮を重視しています。今後も国際的な動向や社会的要請を踏まえ、これらのガイドラインに基づく実践と継続的な見直しに取り組んでいきます。

カシオグループ生物多様性ガイドライン

基本方針

カシオグループは、「事業活動が生物多様性からの恵みを受けて成立し、また、生物多様性に影響を与えている」との認識にたち、生物多様性の保全活動を地球温暖化防止への取り組みと並ぶ重要な環境活動として位置づけ、環境経営に取り込み、推進体制を構築したうえで、持続可能な社会の実現のため、グループをあげて取り組みます。

具体的な取り組み

1．（事業活動）
自然の摂理や伝統に学び、その知恵をいかした技術開発を行い、ユーザーの自然愛護の精神を喚起する製品やサービスを創造し提供することにより、持続可能な社会の実現に貢献します。

ペーパーレス社会の構築を促進します。
独自の技術開発により省資源化へ貢献します。
自然を慈しむ商品開発を行います。

2．（影響評価）
研究／開発、設計、資材調達、製造、物流、販売、製品使用、廃棄、リサイクル等の事業活動、及び事業所や工場立地において、生物多様性に与える影響の調査・分析を行い、改善する施策を定め、影響の大きいもの、効果の高いものから実施していきます。

生態系サービスを利用／使用している部材（皮革、木材、紙等）、素材（鉱物資源等）の適正な調達に積極的に取り組みます。
製品を構成する部材／素材レベルでの生態系への配慮を確認するため、サプライチェーンを通じたアンケート調査を実施します。
カシオグループとしての影響評価手法（チェックシート、指標導入）を確立します。

3．（情報開示）
環境活動の成果を積極的に開示し、社会の生物多様性への意識向上に努めます。

4．（社会連携）
NPO/NGO、行政機関、地域住民等による生物多様性保全に貢献する活動を積極的に支援します。

5．（全員参加）
全従業員に対して、生物多様性の保全に対する理解を高め、自主的な活動を実践していくための教育を行い、全員参加の活動をめざします。

カシオグループ紙の調達方針

目的：紙の原料となる森林資源の保護と持続可能な利用を通じた生物多様性の保全を目的として、紙の調達方針を定める。

適用範囲：カシオグループが国内外で調達する紙製品全般

方針：以下の基準に沿って事業活動で使用する紙を調達する。

紙の原料木は、伐採地の法律・規則を守って生産されたものであること
保護価値の高い森林を破壊しておらず、重大な環境・社会問題にかかわる企業の製品ではないこと
信頼できる認証紙や再生紙を優先的に利用する

目標と実績

評価　◎：すべての目標達成、○：目標をおおむね達成、△：成果より課題が残る、×：進捗なし

中長期目標	2024年度目標	2024年度実績	評価	2025年度目標
社員やその家族を含め、多くの人々の生物多様性の理解と認識が深まっている	国内で250名相当／年の野外活動体験者を輩出	289名	◎	国内で250名相当／年の野外活動体験者を輩出

体制

カシオでは、ISO14001環境マネジメントシステムの一環として、2017年に生物多様性にかかわる施策を推進する「M3委員会」を設置しました。
M3委員会では、2017年に国内主要事業拠点での生物多様性調査を実施し、環境省レッドリストに掲載されている希少植物等が事業所敷地内に自生していることを確認しました。以降、社員有志「見守り隊」による保全活動を継続しています。また、2018年には地球環境の基礎である森林の保全にかかわる社会課題を自分事化する機会として、東京都水道局との協定に基づく「CASIOの森」活動を開始しました。
これらの施策は、社内外においてネイチャー・ポジティブの主流化に貢献することを目的としています。そのため、中長期目標として、2024年に「社員やその家族を含め、多くの人々の生物多様性の理解と認識が深まっている」という2030年のゴールイメージを定めました。加えて、2024年度・2025年度の目標として、日本国内で「年間250名相当の野外活動体験者の輩出」を設定しています。
これらの目標は、カシオが「生物多様性ガイドライン」に定めている、「5.全員参加」を具体化したものです。「野外活動体験」は、生物多様性国家戦略2023-2030で触れられている「自然体験」と概ね同趣旨として扱っており、生物多様性の主流化のカギとなる現場での体験として、「CASIOの森」や「見守り隊」、さらに「WILD MIND GO!GO!」等のイベントスタッフとしての参加を対象としています。特に重視しているのは社員の自発性であり、通常業務との関連有無にとらわれず、社員自らの意思で参加可否を決定できるよう、休日を中心に活動を設定しています。これにより、社会課題への感度が高い社員が現場に集い、互いに刺激し合いながら、肌感覚での学びや自分事化を促進することを狙っています。

これらの活動実績を踏まえ、2024年に東京都が推進する「東京グリーンビズ」のコラボレーションパートナーに登録されました。

※2025年11月25日更新

自然との共生