教育啓発
教育啓発
WILD MIND GO! GO!
日本の環境省が策定した「生物多様性国家戦略2023-2030」では、生物多様性損失の根本原因として「社会経済に生物多様性が主流化されていない」ことを上げています。さらにこの国家戦略に示される分析として「生物多様性の重要性や我々の暮らしとの関係性への認識が低ければ、生物に配慮した行動や意思決定にはつながらないと考えられる。こうした生物多様性が主流化されていない状況に対応していくためには、社会の価値観や行動を変えていく必要があり、まずは教育や自然体験の機会を通じて関心や理解を高めることが強く求められる。」と述べられています。カシオでは、この分析に共感する立場から、社会的要求に対して自社事業により解決策を提供すべく、WILD MIND GO!GO!の取組を進めています。
WILD MIND GO! GO! では、アウトドアのエキスパートをはじめ、アーティスト、デザイナー、科学者など80名以上のスペシャリストが幅広い年齢層を考慮して創意工夫したオリジナルなメニューを提供しています。現在このメニューは200本以上あり誰でも気軽にPCやスマホから無料で閲覧し、公園や雑木林、河原など身近な自然のフィールドで自然体験を行うことができます。また、自分自身の報告を掲載して共有することも可能です。
実際に体験された方々からは、身近な自然でありながら気づいていなかったさまざまな不思議を発見できた、わくわくするような冒険ができた、などの声を頂いています。
WILD MIND GO! GO! では、自然の新鮮な魅力を味わう体験から、もう一度人と自然をつなぎ、人が本来もつ豊かな「生き物としての力」を取り戻すことも大きな狙いとしています。ものごとを学ぶ上での基礎は知識を習得することですが、情報量が限られた文字や映像からの学びとの比較において、自然のフィールドでの体験は情報量が無限大といえます。それを一言で表現すれば、「自分でやってみなければ分からないことがある」といえるかもしれません。
心が動いたり、時には失敗したりすることも含めて、体験には頭で理解することを超えた「何か」があります。体験してわかることや、経験を重ねることで身につくことこそ、心や体に刻まれるかけがえのないものです。そのひとつが自然との共生感です。食べたり、活用したりすることで、対象の自然との間に意味のある関係性が生まれ、無関心な自然が、自分事の自然に変わります。
カシオでは、より多くの人々が身近な自然を体験して理解し、その上さらに自分自身の「生き物としての力」を取り戻すための施策としてWILD MIND GO! GO! の取り組みを継続していきます。
WILD MIND GO! GO! のイベントは一部収益化しており、本活動をより持続可能なものとしています。
CASIOの森
2018年8月、カシオは東京都水道局と「東京水道~企業の森(ネーミングライツ)協定」を締結し森林保全への取組を開始しました。この取組では大きく2つの点に着目しています。まず1点目は、社員の教育啓発の場としての活用です。人類社会の持続可能性の重要な基礎は地球環境であり、その中で森林が極めて大きな役割を果たす自然資本であることについて、社員の理解を深める貴重な学びの機会として現場を見て作業を体験すること。そして2点目は、それらの現場体験から森林保全におけるニーズを自分事化し、当社の得意とする事業分野でどんな貢献ができるかを考え実行に繋げることです。
東京都では山梨県との都県境にまたがる地域で約25,000ヘクタールの水道水源林を明治期から管理していますが、「CASIOの森」はそのうちわずか2.46ヘクタールです。その限られた面積の中で、当社社員が年3回の現場作業で管理に貢献できる部分は一部に過ぎません。それでも様々な作業体験が可能であり、森林保全をめぐる諸課題を理解するためには有効な広さであるといえます。
「CASIOの森」での活動は休日に社員有志を募集して実施していますが、この狙いは少しでも地球環境問題に関心のある社員を集めることにあります。業務としての強制力がないために募集には苦労する反面、貴重な個人の休日を潰して何を経験し何を学びとして持ち帰るか?という知的好奇心を活性化できるメリットがあります。この点に着目し社員中心に創意工夫しながら企画し実行することで、教育啓発の効果を一人一人のレベルで最大化し、徐々に社内に広めていくことを目指しています。
「CASIOの森」は標高約1,200mにあることから天候が変わりやすく、活動日が雨天の場合は室内プログラムとして森林認証材等を用いた野鳥巣箱製作を実施しています。水道水源林への巣箱設置は東京都において1962年から実施されていますが、これは森林で発生する病虫害を防ぐ野鳥の繁殖を促すためのものであり、NbS(ネイチャー・ベースド・ソリューション)の先駆けといえます。「CASIOの森」においても2019年から設置を開始していますが、毎年秋の活動で内部清掃を重ねる中で、小型野鳥以外の別の生き物が巣箱を利用している形跡が見られるため、試験的に別のサイズ・形状の巣箱を2022年より追加で設置を始めました。
「CASIOの森」の活動は、2020年、2021年には新型コロナウイルスによるパンデミックへの対応から、規模を縮小せざるを得ませんでしたが、2022年にはコロナ明けの活動の本格再開を目指し、座学としての東京都水道局によるリモート講演会「出張!企業の森」を環境会議の場で実施しました。また、同じく2022年からは、現地作業に参加できない社員でも間接的に貢献できる「どんぐり里親活動」を開始し、現地で採取したどんぐりから育てたミズナラ苗を2023年9月に125本補植しました。また、2023年度からは健康経営施策としての意義を追加し、ヘルスツーリズムと運動習慣の獲得支援を目的に、作業前に人事部指導によるラジオ体操も開始しました。これらの取組により社員の参加者も徐々に増加しており、2023年9月までに延べ242名の社員が活動に参加しています。
2023年9月補植の集合写真
「CASIOの森」は2023本年度で3年間の協定の第2シーズンを終了し、2024年8月には協定更新時期が到来します。この協定更新にあたっては当初想定した目的の評価が重要です。その点では、社員の教育啓発の機能は徐々に充実していますが、まだ不足している部分としては、カーボンニュートラルに向けた気候変動対策に関する学びの要素があります。我々の日常生活でのエネルギー利用によるCO2の排出と、森林による吸収ならびに材料としての活用によるCO2の固定に関する教育啓発の要素を今後とりこんでいく必要があります。また、最終的に目指すべきは自社事業の得意分野を生かした社会課題への貢献ですが、この実現はまだ道半ばといえます。これらの点をいかにして達成するか?が第3シーズンに向けた課題と認識し、創意工夫をしながら推進していきます。