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カシオ時計事業50周年の一環として、指輪サイズの時計が登場しました。
その名も、「CASIO RING WATCH(CRW-001)」。こんなに小さくても、時刻や日付、カレンダー表示切り替えはもちろん、ストップウオッチやバックライト機能も付いていて、さらには日常生活防水、電池交換も可能な本格的な時計です。
この製品の実現の経緯と、時計の心臓部となる小型モジュール実現のためのさまざまな取り組みについて、プロジェクトの中心人物のひとりとしてこのモジュールの開発を担当した有田さんにお話を聞きました。

カシオ深圳 統轄部長 有田 幸喜
きっかけは、何気ない雑談
はじまりは、2023年3月末。新たな技術について情報共有する会議の中で、G-SHOCKの魅力を別の形で世に出したいと考えた開発本部の依頼をもとにカシオの中国工場が得意とする金型技術を用いて作成した、時計の形状が忠実に再現可能となった指輪が紹介されました。その後の先輩社員との雑談の中で、これにモジュールを組み込んで、ちゃんと時計として使えるものにしたら面白いかも、という話が出たんです。
これを実現するには、指輪サイズに収まる小型モジュールが必要です。早速、翌4月から開発をスタートさせました。
あまり深く考えずに取り組み開始
このサイズの時計となると、実現にはさまざまな課題がありそうではありましたが、正直、取り組みは、やるかどうかで悩むことなく開始しました。面白そうだし、時計機能だけなら実現できそうだという勝算がありましたから。
実際にやってみたら課題が山積していましたが、やっぱりやめようとは思わなかったです。その理由の1つが、カシオ時計のカプセルトイです。第一弾の登場が、取り組みを開始して3ヵ月ほど後の7月。正直、先を越された!と思いましたが(笑)、これを入手された人がSNSなどで「実際に動くのもあったらいいな」などといった書き込みが多数あるという話を企画推進の方から聞いて、これはやるしかないな、と思いました。
それからさらに3ヵ月後の9月末に再び同じ会議があり、そこで開発中だった小型モジュールを使った指輪型の時計を、商品コンセプト提案に出しました。
これが、おもしろいね!ということになり、商品企画へつながりました。
目指すなら本格的機能!でも難題が次々と…
商品化が決まると、腕時計の機能をできる限り盛り込もう、時刻表示だけでなく、日付表示切り替えやストップウオッチ機能も、ということになりました。これにより、さらなる難題が浮上してくることになります。とりわけ次の3つが、対応が大変だった点です。
1. 小型化
2. コスト抑制
3. 量産化
搭載できるモジュールのサイズは、指輪のモデルとなった“G-SHOCK”「DW5600」シリーズと比較してわずか10分の1。このサイズの中に多くの機能を収めるには、当初の予想以上に小型のモジュールの開発が必須でした。また、コスト度外視で実現しても高額になってしまいますし、量産できなければ多くの皆さんに使ってもらえません。試行錯誤を繰り返しながら、これらの課題に取り組みました。

小型モジュールはこうして実現した
腕時計だったらあり得ない!?超薄型部品の採用
小型モジュールの実現には、あらゆる部品を徹底的に小型化・薄型化する必要があります。液晶画面は超薄型を採用し、画面を明るくする導光板は、素材の見直しから行いました。 これらは、カシオとして初めて採用したものです。これだけ薄いものを腕時計に使った場合、少しの衝撃で割れる可能性がありますが、リングウオッチの表示画面は1センチ四方程度。これならだいじょうぶかも、と思って試してみたところ、うまくいくことがわかりました(もちろん、品質試験はちゃんとクリアしています!)。

左:DW-5600系 LCD
右:小型モジュールLCD

上:DW-5600系導光板
下:小型モジュール導光板

左:DW-5600系LCDガラス
右:小型モジュールLCDガラス
掟破り!の小型高密度実装
基板実装では、部品同士はなるべく離したほうが干渉によるトラブルは減ります。そのため、基板配置には、部品同士は最低これだけ距離を置く、といった決まりがあります。
ですが、当初はなかったLEDバックライトが追加されることになったことで基板上により多くの実装が必要になり、基板配置の決まりをいったん度外視した高密度で実装を行ってみました。試行錯誤はありましたが、これもどうにか成功させることができました。

バックライトがなかったときの基板実装(上段)と、追加後の実装(下段)バックライトなしの実装は部品配置に比較的余裕がありますが、バックライト追加後は部品同士がだいぶ接近している感じです。

ちなみに、チップのサイズはこんなに小さかったりします。
このように、従来ならやらないこともやらざるを得ない状況が多々出現し、そうしたときには考え方を変え、それまでの常套手段をいったん捨てることにしました。
部品同士の隙間や成形部品の厚みを極限まで小さくすることはもちろん、材料、製造方法も、いつもなら用いないことやものも視野に入れて試していきました。結果としてこれが奏功し、小型モジュールを実現することができました。

モジュールは、A4サイズのノートパソコンのキーよりも一回り小さいサイズとなりました。こうしてみると、小ささがよくわかります。
外装にもさまざまな工夫を採用
金属粉末射出成形で複雑な形状に対応、研磨道具は独自開発!
指輪は小さく複雑な形なので、その形状に加工する難易度が高いという問題がありました。様々な加工法を試し、最終的に、コストも比較的抑えられる「MIM(金属粉末射出成形)」という、金属の粉末と樹脂を混ぜたものを金型の中に射出して成型する加工法を採用しました。
また、この小さくて複雑な形状の指輪を磨くための、専用の道具(研磨治具)を開発しました。

防水性と電池交換の両立、カギは両面テープにあり
指輪ですから、日常生活の中で濡れることも想定されます。そのため、防水性は必須でした。さらに、長く愛される製品にするため電池交換も可能にしたい。この2つの両立も課題でした。
裏蓋がないので、電池交換は時計のフェイス面のガラス部分から行いますが、防水性のためにはフェイス面から水などが入らないよう、しっかり止める必要があります。下記のようなさまざまな方法を検討しました。
接着方法 | 導入可否 |
理由 |
---|---|---|
ホットメルト |
✕ |
硬化温度が高いので、モジュールが熱で破壊される |
ガスケット※ |
✕ |
指輪時計が小さいので、ガスケットの受け面が足りない |
接着剤 |
✕ |
ガラス取り外せない、電池交換できなくなる |
両面テープ |
〇 |
ガラス取り外せる、日常生活用防水も実現できる |
※ガスケットとは:部品の間に挟んで、液体や気体などが漏れないようにするシール材のこと。
結局、しっかり固定できるけれど取り外しもできる、「両面テープ」が最適解となりました。

電池交換が可能なように、ガラス面は両面テープ接着で取り外し可能にしました。

オレンジの部分がスペーサー、これでサイズ調整します。
ついに完成!でもこれがゴールではありません
こうした取り組みを経て、ようやく製品として皆さんにご覧いただけるものができました。
取引先やメディアを招いた展示会などですでに紹介していて、よい反応をいただいてはいますが、実際の発売を待たないと、どんな反響が出るかわかりません。今は、楽しみと緊張が半々といった感じです。
なお、今回リングウオッチのために開発した小型モジュールは、今後他の形状の製品にも活用していけると考えています。このモジュール自体も、これが最終形とは思っていません。さらに進化させて、より驚きのある何かをさらに生み出せていけたら、と思っています。
このモジュールがどう進化し、どんな製品に展開していくか、考えるとワクワクしますね!
このようなさまざまな試行錯誤の末に誕生したこのCASIO RING WATCH(CRW-001)は、12月13日(金)より、カシオオンラインストアおよび各販売店にて発売開始されます。価格は、19,800円(税込)。ぜひ、チェックしてみてください。

<製品サイト>
CRW-001-1JR
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