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スペインやフランスなどで売られているカシオの関数電卓の数は累計で13万台以上ありますが、その中にはカバーに女性の科学者のイラストが描かれたものがあります。また、このイラストを女性科学者のプロフィール文などとともにポスター化した素材や、関連する学習素材も、サイトから無償でダウンロードできるようになっています。
これは、カシオ計算機の販売子会社であるカシオスペインの教育事業部が推進する、「Women Do Science」という取り組みによるものです。なぜ、多様な女性科学者のイラストを関数電卓のカバーやポスターなどで紹介しているのか?取り組みの発案・推進者であるベルナールさんに、きっかけや主旨、想いを聞いてみました。

ベルナールさん
―「Women Do Science」とは、どのような取り組みですか?
ベルナールさん:カシオスペインで2018年に開始したもので、関数電卓のカバーに女性科学者のイラストを載せること、そうしたイラストや科学者のプロフィールを紹介する素材を提供することを主な活動としています。女性科学者の存在を示すことで、広く知らしめることが目的です。
女性科学者を入れた最初の関数電卓を世に出したのが2019年のことで、以来5年間で取り上げた女性科学者は2025年1月現在で24人に上ります。当初はカシオスペインのみでの取り組みでしたが、2023年にはカシオフランスでも始まり、今後、ベルギーなどでも導入予定です。
こちらが、デザインの一例です。

―どれも素敵なデザインですね!なぜ、このような取り組みを始めたのでしょうか?
ベルナールさん:きっかけは、2018年にガーディアン紙の「女性科学者のジェス・ウェイドさんが、“科学における女性”という記事をウィキペディアに執筆している」という記事を読んだことです。この記事が、私の心の根底にあった、学習の、とりわけ理数分野の男女格差解消にカシオができることは?という問いを、改めて思い起こさせました。
教育の男女格差解消は、基本的人権、人生の幸福度、そして個人やその国の長期的な経済的発展にも関係することで、とても重要な課題です。ユネスコでも、科学分野における男女格差解消が目標の一つに掲げられています。
一方、スペインの子どもたちへの調査を見ると、10~16歳では女の子のほうが数学に苦手意識を抱きがちで、もっと幼い7~10歳では、私はあまり賢くないという自己認識を持つ女の子が多いことがわかりました。実際に勉強ができるできないに関わらず、です。いわば、思い込みですよね。
こうした思い込みから女の子を(そして周囲の人たちを)解放するためにカシオができることとして思いついたのが、関数電卓のカバーに女性科学者のイラストを載せて、女性の先人が数多くいることを見せることだったんです。

この取り組みのきっかけをくれたジェス・ウェイドさんは、その後、関数電卓カバーのイラストやポスターに登場してくれました。
―意識を変えるきっかけとするために、こうした女性の科学者のイラストを関数電卓に載せることが有効ということですね。
ベルナールさん:はい。関数電卓は、スペインをはじめ欧州の多くの国では、中学・高校で学ぶ数学、物理学、化学、科学の授業でよく使われるツールで、ほとんどの生徒が持っています。そのため、理数系分野における女性の活躍を紹介するのにうってつけだと考えました。
ある分野の学問を目指すのに、本来は男性も女性も関係ないはずなのですが、現実には、理系分野、特に数学、工学などの分野において、まだまだ女性は少数派です。その理由の一因が、女性は理数系が苦手という本人の、さらには周囲のバイアスや思い込みから来るのなら、この方法は思い込みを変えていくのに有効な手段となり得るはずです。
イラスト付き関数電卓をどう思う?1000人以上にアンケートを実施
―スペインでも、女の子は理数系が苦手と考えられがちなんですね。この取り組みは、うまくいくと思いましたか?
ベルナールさん:まったく新しい試みだったので、実際に関数電卓を使用する先生や生徒たちがどう思うかわかりませんでしたし、取り組みとして推進する場合は、根拠となる情報も必要でした。なので、まず、450人の先生と700人以上の生徒の皆さんにアンケートを実施しました。
先生方は100%前向きな回答で、また生徒の多くも、イラスト付きがいいと答えてくれました。それで「Women Do Science」の取り組みが本格スタートすることになったんです。
結果として、現在までに累計で85,000台を超えるイラスト付き関数電卓が先生や生徒さんの手に渡り、愛用していただいています。
―女性の科学者の方は、昔の方から現在活躍している方までさまざまですが、これはどのような基準で選択するのですか?
ベルナールさん:キャリアを実現するまでの道のりについて説得力のあるストーリーを持つ方に、スポットを当てています。また、許可を得ずにイラスト化はできないので、特に昔の方の場合は、適切な許可を得るための信頼できる連絡先の確保が不可欠です。例えば、キュリー夫人の場合では、孫娘の方々に連絡を取って私たちの取り組みの趣旨を説明し了承を得ました。

キュリー夫人(上段イラスト)と、その娘でやはり科学者のイレーヌ・キュリーさん(下段イラスト)の登場は、キュリー夫人のお孫さん方のご了承を得て実現しました
また、マルガリータ・サラスの娘さんやアンジェラ・ルイス・ロブレスのお孫さんにも、お話をさせていただきました。
もちろん、現在活躍中の方々ついては、直接ご本人の同意を得ています。

ご自身のイラスト付き関数電卓とポスターを手にした科学者の皆さんと
―イラストはどれもテイストが異なっていて、バラエティに富んでいますね。楽しいアート作品を見ているようです。それぞれ違う方の作品なのでしょうか?
ベルナールさん:はい、1人の科学者につき、1人のスペイン人女性アーティストが手掛けています。現時点で24種類なので、24人のアーティストの協力を得ていることになります。この人数は、今後ご登場いただく科学者の方が増えるにつれ、さらに増える予定です。
なお、1人に1作品を女性アーティストに依頼するのは、芸術分野においても女性活躍を後押しすることを目指しているためです。
―ポスターなど教室に掲示する素材の提供も行っているそうですが、その目的はどのようなものですか?
ベルナールさん:私たちは、この問題に関する理解や対話の促進に有効なコンテンツの提供も積極的に行うよう努めていて、ポスターはその重要な一翼を担っています。各ポスターでは女性科学者の紹介と彼女の言葉や信条、イラストを描いたアーティストのサインを掲載しています。これらを教室に貼る、生徒と先生がこうした注目すべき人々について話し合うきっかけになり、知識を深めることが可能になります。言い換えると、関数電卓カバーのイラストは、実は「Women Do Science」の取り組みの、ほんの出発点なんです。

教室に貼られたポスターの例。これが会話のきっかけになればと思っています。
このポスターはMujeres en la cienciaサイトから無償で、スペイン語、カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語、英語でダウンロードできるようにしています。
このサイトでは、ポスターのほかにも、各年齢層に合わせたクイズアプリや理数系学習に役立つビデオチャンネルやポッドキャスト、関連リンクなど多種多様なコンテンツを用意しています。さらに、女性科学者の経歴、業績などとともに、彼女たちをイラスト化したアーティストたちの略歴も紹介しています。
こうした素材提供による女性の先人を見せることが、女の子たちに自分の可能性を信じる勇気を与え、男の子や周囲の大人たちも含めた会話につながり、そうだよね、女の子でも理数系を勉強するのは普通のことだよね、という意識が広まることを願っています。

関数電卓のイラストから興味を持ち、女性科学者の1人に関するレポートを作成してくれた子も
※お母さんから使用許諾を得ています
直近の取り組みとしては、女性科学者を取り上げたパネル展を行っていて、2月9日にはバルセロナで人気の絶景スポット・ティビダボ山の遊園地で展示を実施しました。


2月11日からは、同様の展示をカタルーニャ工科大学で、4月6日まで開催しています。2月11日は国連が定めた「科学における女性と少女の国際デー(International Day of Women and Girls in Science)」なので、展示を開始するには絶好の日だったんです。
― 今後の目標について、教えてください。
ベルナールさん:学習する一人ひとりの背を押すこと、カシオの教育事業が掲げるステートメント「Boost Your Curiosity」の推進が、「Women Do Science」の目指すところの1つです。本来、学ぶことは好奇心を駆り立てられる、楽しいことであるはずです。なので、無意識のバイアスに縛られることなく、楽しいと思える学びを追求してほしい。そのきっかけを、より多くの女性科学者を紹介し、同時に、展開エリアも拡大していくことで、もっともっと広めていきたいですね。
科学に取り組む女性(Women Do Science)が特別でない、ごく普通の存在になる、男女関係なく好きな学問に何の先入観もなく打ち込める、そんな世界の実現のため、今後とも日本のカシオメンバーとともに取り組んでいきたいです。

サステナビリティ
新しい価値を生み出し続ける企業を目指します。

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