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【CAE編】カシオの「デジタルエンジニアリング」最新事情をご紹介します

2025年10月20日


近年、ものづくりの現場ではデジタル技術を活用し、製品開発の効率化と品質向上を図る「デジタルエンジニアリング」が注目されています。さまざまな製品を生み出す当社でも、この取り組みを積極的に推進しています。

今回は、その中でも性能評価に使用するデジタル技術「CAE(Computer-Aided Engineering)」に焦点を当て、デジタルエンジニアリング開発室の遠藤将幸リーダーへのインタビューを通じて、最新の取り組みをご紹介します。

遠藤将幸の画像

時計事業部 時計開発統轄部 技術開発部デジタルエンジニアリング開発室 遠藤将幸リーダー

コンピューター上で製品設計の性能評価ができるCAE
CAEは、製品設計の強度などの性能評価をコンピューター上で行う技術です。製品開発の工程としては、初期検証から始まり、構想設計、詳細設計、金型製作、実機試験、量産…と続きますが、CAEは主に下記の3か所で活躍しています。

初期検証段階:初期にアイデアの妥当性を確認するため
構想設計・詳細設計段階:設計の妥当性を検証し、設計の手戻りを減らすため
実機試験段階:試験をクリアできなかった設計の改造案を検証し、一度で解決するため

設計段階から 、データを基にした評価を繰り返すことで、経験や勘に頼らず、論理的な設計が実現できます。

CAEを用いた時計の落下解析

約20年前からさまざまな製品にCAEを活用
カシオでは2000年代の携帯電話開発時からCAE解析を導入していたと聞いています。私自身はデジタルカメラ設計でCAEの取り組みが始まった2010年からCAEに関わっていますが、当時はたくさんある品目ごとに独立して開発を行い、ノウハウ共有も限定的でした。

その後、他の製品にも活用が広がり、2020年にはCAEの技術開発と普及のために専門部隊を設立。経験のある私もその一員となりました。現在は、全品目横断でCAEを活用できる体制を整えています。

<主な活用事例>
活用事例1(関数電卓):液晶を守る金属部品を樹脂部品へ切り替え、液晶割れなどが発生しないかをCAEで確認
活用事例2(電子ピアノ):スタンドの剛性を下げることなくデザイン性を向上させるため、スタンド部分の設計検証にCAEを活用
活用事例3(時計):液晶が割れるメカニズムを解明するためにCAEを活用し、応力が集中する箇所や応力を緩和するための内部構造を検討

実践的な社内セミナーにより、半数以上の設計者がCAEをマスター
CAEは製品設計する現場のエンジニアに使ってもらえるのが一番ですが、通常業務に加えて、いきなり新しい専門的なソフトを使ってもらうのはなかなかハードルが高いものです。そこで私たち専門部隊は、年4回、社内セミナーを開催して、多くの設計者にメリットを体感し、習得してもらえるよう努めています。

セミナーは約3か月間の少人数制。わかりやすい手順書付きのテキストや過去製品の事例を用いた実践的なレッスンを実施しています。その結果、数年前にはCAE解析専任者のみの数人だったところ、現在は半数以上の現場の設計者がCAE解析の基本操作をマスターしています。

CAEサポート動画の画像

初心者向けのCAEサポート動画

自動化でさらにミスなく、初心者でも使いやすく
最近はCAEをより使いやすくするため、解析作業の自動化にも取り組んでいます。

CAEは便利な技術ですが、解析前には3Dデータや材料、解析条件など数百項目の設定が必要で、実はこれに多大な時間と労力がかかります。楽器はネジだけで400本も…。例えば、ネジひとつの設定ミスでも、数時間~数十時間かかる解析を一からやり直すことになります。特に初心者の設計者には、大きな負担がかかってしまいます。そこで最近、設計者の負担軽減とミス防止を目的とした自動化プログラムをCAEソフトに組み込みました。これにより、解析作業にかかる時間を最大約4割削減できる見込みです。

現在は解析前の設定作業をメインで自動化していますが、将来的には解析結果のチェックや報告書作成までトータルで自動化していきます。もっとソフトを使いやすくすることで、より多くの現場の設計者にCAEを活用してもらいたいと思っています。

解析作業はコンピューターに任せ、エンジニアは開発に集中できる環境づくりを
カシオらしい驚きに満ちた製品を一日でも早くユーザーに届けたい──という思いが開発のデジタル化を進めている原動力です。定常的な解析業務はコンピューターに任せ、デジタル技術を活用したことで出来る新しい価値の創造に向け、今後も挑み続けたいと思います。

遠藤将幸の画像

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