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カシオのちょっと意外なロングセラー、防水・防塵電卓についてご紹介します。
電卓は、オフィスや家、学校などで使うイメージがあると思いますが、この防水・防塵電卓はキーボードを外して丸洗いできます。そのため、工事現場や飲食店などの汚れや埃が気になる場所での使用に適していて、発売から10年近く、ずっと売れ続けています。
従来のイメージとは異なるシーンでの利用を想定したこの電卓は、どんな発想から生まれ、実現したのか?企画開発した大平さんに聞きました。
従来の利用シーンから離れて、発想を横展開
電卓は、意外な使われ方や利用シーンが少ない製品です。そんな電卓で新発想の製品企画を、と考えたのが2011年のこと。このとき、従来の延長線上、よくある利用シーンから考えるのではなく、そこから離れて想像を膨らませて発想を横展開していくことにしたんです。
「電卓は、家ならリビングで使う?寝室は暗いし」
「でも、寝室で一人、へそくりの計算したい人もいるかも(笑)」
「一人になるなら、寝室よりトイレ?風呂?電卓を濡らすのはまずいかな」
「でも、電卓は濡らさないものというのは、固定観念??」
こんな具合につらつら考えるうちに、ふと、子どもの頃のある光景が蘇りました。
近所のラーメン屋さんには、お店の高い位置にブラウン管テレビがあって、そのリモコンに食品用ラップが巻いてあったんです。そうか、リモコンがべたべたしてくるから、カバーしていたんだ。汚れたら剥がして取り換えられる!そういえば、電卓もラップが巻かれていた。でも、キーの押しやすさ、表示の見やすさは、損なわれていたな。…それなら、本体を洗うのは無理だけど、キー部分を取り外して、べたべたを洗い落とせる電卓があったら喜ばれるんじゃないか?
この発想を元に、防水・防塵電卓を企画しました。
CS本部 CS技術部 大平部長
キーボードが洗える電卓、それをどう実現する?
キーボード着脱可能な電卓は、これまでカシオに無かったから、どう実現するかから考える必要がありました。気軽に洗ってもらうには、工具なしで簡単に着脱でき、しかも使用中は外れないことが大事です。結果、考えたのが、こちら。
着脱シーンの動画
※この動画は、実際の製品の着脱の様子です。
キーボードをホールドするボタンを押すと本体からカチッと外れて、戻すときもカチッと入れるだけ。これなら気軽に取り外して洗ってもらえそうですよね。
実現は1人ではできない、説得力を持って周囲を巻き込む
とはいえ、この構造は言葉ではイメージが伝わりづらい。説明しても反応がいまいちだったので、デザイナーにスケッチを依頼し、それを元に取り外し構造部の見本(モックアップと言います)を作りました。
見本を見せて説明すると、説得力が違いました。実現は難しいのでは…という感想は、それならできそう、という声に変わりました。
それから試作を繰り返し、2015年3月、最初の防水・防塵電卓の発売にこぎつけました。嬉しいことに、以来10年近くずっと、売れ続けています。
不便はニーズの裏返しです。何となく気になることがあると放置しないで掘り下げる、それが大事だな、と感じました。
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