Skip to content

お気に入りに商品が追加されました。

TOPICS

【現場の電卓】僕がExcelでなく関数電卓を手にする理由~「刀剣乱舞」のゲームデザイナー・芝村裕吏さんにききました

2024年12月26日


「刀剣乱舞」などの作品で有名なゲームデザイナーの芝村裕吏(しばむら・ゆうり)さん。今年、ハヤカワ新書で「関数電卓がすごい」という本を出されました。

関数電卓を使って、モノの購入価値や仕事のスケジュール、健康管理や人生設計に至るまで、生活のさまざまな場面で式を立てて計算してみることで、人生をより良く変えることができる!という本です。関数電卓を使ったおもしろい計算が満載されています。

本の詳細は、こちらの記事(カシオ公式note:ハヤカワ新書「関数電卓がすごい」は計算で人生を変える本だった!)をお読みください。

この本がとてもおもしろかったので、芝村さんを取材させていただきました。

芝村裕吏さん

芝村さんは、自衛隊の戦車部隊に所属した後、アメリカに留学され、帰国してゲーム制作会社に入社。現在はフリーのゲームデザイナーとして活躍しておられます。
関数電卓の他にもたくさんのカシオ製品をお持ちで、取材した方もびっくりでした。コンピュータゲームの制作では、計算はExcelでやっているものと思っていました。なぜ関数電卓が必要なのでしょうか?
芝村さんが教えてくださったのは、ゲーム制作の現場のリアルなニーズでした!

戦車の走行限界を関数電卓で予測していた

中学の時、父から「そろそろ複利計算ぐらいはできるようにならないと」と買い与えられたのが、僕が使った最初の関数電卓でした。
学校を卒業して自衛隊に入り、戦車部隊に配属されました。戦車の中で弾薬庫から砲弾を出して砲身に装填する仕事です。発射後は煙がもうもうとたちこめて見えないし、発射時の空気圧は眼球が一瞬歪むほどで、大変な仕事場でした。

戦車は障害物の多い凸凹な地面を走ります。キャタピラなどの部品を、かなりの頻度で交換しないと走り続けられません。戦車の部品は日用品ではないので、北海道にしか在庫がないといった理由で、発注して届くまでに数週間もかかることがあります。だから戦車の中に関数電卓を持ち込んで「あと何キロ走ったらこの部品が壊れます」「あと30分は行けるかもしれません」と予測を立てて上官に報告していました。

自衛隊を退官した後は、アメリカの大学に行きました。試験に持ち込める電卓の機種が指定されていて、最初はテキサスインスツルメンツの電卓を買おうとしたんですが、操作方法が慣れ親しんだカシオの電卓とあまりに違っていたので「これではテストに落ちてしまう!」と思い、結局、自衛隊時代から使い慣れたカシオの電卓を買って使っていました。

ゲーム機の貧弱な計算パワーを、関数電卓で出した「丸暗記データ」で補っていた

アメリカ留学から帰ってきて、ゲーム制作会社に入社しました。
昔のゲーム制作には関数電卓が欠かせませんでした。RPG(ロール・プレイング・ゲーム)では武器の強さやモンスターの防御力など、いろんなパラメータを使います。モンスターの種類が少ないとゲームが単調になるから、色や形を変えてバリエーションを増やさなければなりません。しかし昔のゲーム機のハードウェアは貧弱だったので、リアルタイムでたくさんの計算をさせることができなかったんです。そこで計算量を節約するため、九九のように計算結果をメモリに「丸暗記」させておいて引き出す方法をとっていました。丸暗記用のデータは関数電卓で計算しておくわけです。

少ないメモリの中にどれだけデータを押し込めるかが勝負でした。そのためにデータを簡略化する、例えば円周率を3.14じゃなくて3で計算する。そうすれば敵の数を4倍に増やせます。数学的なテクニックが必要なので、関数電卓を駆使して調整を繰り返していました。初期のファミコンゲームは、関数電卓がなかったら作れなかったんじゃないかと思います。

新しいパラメータを付け足したいけど、ゲームのテンポは落とせない。そういった要求に応えるためには、試行錯誤しながら設計を考えるプロセスが必要になります。そういう時にはやっぱり関数電卓が使いやすいんです。

余談ですが、この時代にはカシオの「LOOPY」というシールコンピュータのゲームシナリオの作成も請け負っていました。懐かしいですね。

LOOPY

その場で打って見せられるから、打ち合わせに向いている

ゲーム機のハードウェアが進化した今でも、関数電卓は活躍しています。
制作会社の中には作戦ルームがあって大きな紙が広げてあります。これを見ながら制作を進めていくわけです。今は4Kの大画面モニターもありますが、PCの画面よりも大きな紙の方が、みんなで見て議論するのに向いているんです。
紙を見て、関数電卓で計算しながら「スケジュールのこの部分の作業スピードを1.2倍に上げると納期に間に合う」とか「この部分のコストを下げれば予算枠に収まる」といった議論をします。そのうち、みんな独自の関数をつくって武装し始めます(笑)。
予算や工程表などの資料をExcelで見せると、目が滑って大事なことを見落としたりしますが、紙を見ながら電卓を打って会話すると抜けや漏れが出にくいんです。

電卓をその場で打って見せて説明すると、相手も納得しやすくなります。
手元が見えないと、何をしているのか分からないので、不快感を示される人もいるんです。
打ち合わせやコンサルティングに使う場合は、相手にも画面を見せるので、それなりに大きい電卓が便利です。特に、複数行が表示できるモデルは「パターンAだといくら、パターンBだといくら」と複数の見積もりを同時に見せられるので、選択肢を提示する時に使いやすいです。

複数行表示を使って2パターンの見積もりを提示

スケジュールでもコストでも、人と打ち合わせをする時には、数字が共通言語になります。そんな時に関数電卓が役に立つんです。

アイディアが浮かんだ時、すぐ手に取れる

複雑な計算ならExcelですが、関数電卓の良さは、思いついたらすぐ手に取れることです。
アイディアが浮かんだ時にすぐ計算しないと、頭から逃げていってしまいます。PCを起動してさらにExcelを立ち上げるより、関数電卓を手に取る方が圧倒的に早い。
手に取れば寝転がっても計算できます。机に向かわなくて良いので、酒を飲みながらでも計算ができます(笑)。
自宅の風呂場の壁には、土木測量専業電卓も掛けてありました。防水なので、風呂に入っていてアイディアが湧いた時にサッと計算できて便利でした。妻から「風呂にまでそんなものを置かないで!」と怒られて外されましたが(笑)。

土木測量専業電卓 fx-FD10 Pro(生産完了品)

自分がつくった計算の結果で判断すると、気が楽になる

物事を判断する時には、関数電卓を使って自分の価値観を式にまとめて、数値化しています。感情も数値化できるんですよ。例えば、買い物をする時の「快楽指数」を計算するとします。割引率を考えると、車を50万円割引されるより、卵を50円割引された方が「快楽指数」が高いかもしれないですよね。
仕事でも、私はフリーランスなので、依頼を受けるかどうかを判断する時に、報酬や労力とは別に「楽しさ係数」を打ち込んで、トータルのスコアで決めたりしています。

自分がつくった計算の結果で判断すると、気が楽になります。人生では「あの時ああすればよかった」と後悔することが多いですね。でも客観的なデータで判断しておけば、だめだった時でも「これで良かったんだ」と納得できるし、次に備えて「この係数を変えればよかったかな」「金額をもう少し上げれば良かったかな」と見直すこともできます。これを繰り返すとよりよい結果につながる。それが成長だと思うんです。みんながそういう人生を良くするツールとして電卓を使ってくれるといいなと思っています。

目的に応じて複数の電卓を使い分けている

今日、取材用に持ってきたのは「fx-9750GⅢ」ですが、日頃持ち歩いているのは小型で数字が大きくて見やすい「fx-260 SOLARⅡ」です。人に計算を見せたり、他社に行ってコンサルする時にはこれが便利です。

fx-260 SOLARⅡ

「fx-CG50」も持っていますが、大きくて重いので、使う場面は限定されますね。アメリカで売っていたピンクの関数電卓も色が楽しかったので買って使っていましたが、当時は気でも狂ったのかと言われました(笑)。
海外を旅していた時期があって、この時はカード電卓(SL-800)を何枚も持ち歩いていました。これはあげるととても喜ばれるので、物々交換に便利だったんです。もう通貨がわりでした(笑)。
昔は「VX-3」というポケコンも使っていましたね。持ち歩いてプログラムを打ち込んで遊んでいました。あれは名機でした。当時の「PC-98」よりも使い込んでいたんじゃないかな。

マンモスの肉は何日食べられる?信頼できる情報は電子辞書で調べる

電卓以外にもいろいろカシオ製品を使っています。

腕には最新モデルのPRO TREK HIKER LINE !

今日はPRO TREKをしてきましたが、G-SHOCKは自衛隊時代から愛用しています。戦車の中は衝撃もあるんですが電磁波のノイズもすごくて、電子機器がすぐ壊れるんです。でもG-SHOCKは壊れなかった。1987年頃でしたが、当時、自衛官がみんなG-SHOCKを使い始めていました。僕も愛用していましたが、富士山登頂訓練の途中でバンドが切れて滑落してしまいました。当時の周りの自衛官もバンド切れに悩んでいましたね。自作したり、正規品じゃないバンドを使っている人も多かったんじゃないかな。

電子辞書も使っています。ゲームを作るには多様な分野の知識を駆使します。例えばゲームの中でマンモスを仕留めたら、何人が何日食いつなげるかという設定が必要になります。するとマンモス一頭の肉の量を調べることになるわけです。
マンモスってすごく巨大なイメージがありますよね?でも電子辞書で調べたら「アジアゾウと同じくらい」と書いてあった。意外と小さいんです。人間の記憶なんていい加減なものです。ネットには嘘の情報も多いので、こんな時は信頼のおける電子辞書で調べるようにしています。

資料整理にはネームランドも必需品ですね。仕事柄、資料も含めてたくさんの本を読みますが、どの本で得た着想なのか分からなくなることがあります。だから読んだ時の感想をネームランドで打ち出して本の表紙に貼っています。これがいちばん見つけやすいんです。

keisanサイトも使っています。計算ができるサイトは数多くありますが、やはり「CASIO」の名前が入っているから安心して使えるんです。

‥なんか僕、カシオの回し者みたいですね(笑)。

若者文化を育ててきたカシオに期待

カシオは、いろんな分野で価格破壊をしてきたと思います。安いと若者文化はだいたいイコールなので、価格破壊をすると若者文化が育つんです。カシオのあるところに若者がついてきた。G-SHOCKの人気もそこからでしたよね。チプカシもそうだと思います。
これからもぜひ、若者をひきつけるような、楽しいモノを出し続けてください。


芝村さん、とても楽しくためになるお話を、ありがとうございました。おかげで関数電卓の良さが実感できました。

この記事を読まれた皆さまもぜひ「関数電卓がすごい」と関数電卓を一緒に買って、生活をより良くする式を立てて計算してみてください!

<関連リンク>
早川書房:「関数電卓がすごい」(ハヤカワ新書)
カシオ公式サイト:関数電卓

Select a location