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平成キッズ女子をトリコにしたカシオの子供向け電子手帳とシールワープロ

2026年11月2日


11月3日は文具の日です。カシオの文具といえば、何を思い浮かべられるでしょうか?
平成キッズの女の子たちをとりこにした代表的な電子文具が、子供向け電子手帳「スーパー電子手帳Jr.」や「ピッキートーク」でした。メッセージ交換や占い、ペット育成といった機能が、当時の女子小中学生に人気を博しました。また子供向けワープロやシールプリンタで遊んだ方も多いのではないでしょうか。
1990年代にカシオが出していたキッズ向け電子文具について、当時の話を担当者に振り返ってもらいました。

企画の発端は「大人の道具への憧れをかなえる」だった

―当時、電子手帳はビジネスマン向けのツールでしたが、なぜ子供用をつくったんでしょうか?
もともと電子手帳は、電卓のメモリー機能から生まれたものです。計算結果を記憶できるメモリーが発達して文字も記憶できるようになったので、住所録やスケジュールを管理できる電子手帳が生まれました。

PF-3000の製品画像

電子手帳1号機 PF-3000(1983年発売)

電子手帳は当時のビジネスマンの必携ツールになっていた人気商品でした。子供は大人が使っているものに憧れ、自分でも使ってみたいと思うものですね。それなら子供向けもやってみたらどうか?というアイディアが開発部門の商品企画として出ました。その結果、1992年に「スーパー電子手帳Jr.」JD-300を発売しました。

JD-300の製品画像

スーパー電子手帳Jr.

―子供向けに、どんなアレンジをしたのでしょうか?
実用目的のビジネスマンとは違いますから、いかに「毎日楽しんでもらえるか」を重視した機能を考えました。住所録は「似顔絵つき友達帳」という名前にして、モンタージュ写真のようにパーツを組み合わせて似顔絵がつくれるようにしました。この似顔絵をつくるのを楽しんでもらう。それから、占いが好きな子に向けて、誕生日を入力するとその日の運勢や他の人との相性が分かる占い機能も入れました。数字で占いをする電卓は以前からあったので、その技術を応用することができました。

占い機能の画面

占い機能(画面は後発機種のJD-361より)

女の子に支持されたコミュニケーション機能

JD-300で特に人気を呼んだのが、赤外線を使ってテキストメッセージをやりとりできる通信機能です。最大で9文字なので「きょうひま?」とか「あそびにいこう」といった短文しか入らないんです。赤外線が届くのは数メートルなので、同じ部屋の中でやりとりする感じです。でもこの機能が、特に女子小中学生の間で人気を集めました。

―たくさんのメッセージが飛び交ったんでしょうね。
1993年に発売した「JD-310」からは、赤外線通信を「光トーク」と名付けました。ここにヒントを得て、通信を使った新しい機能を投入していくことになります。
JD-310では「ファッション」という新しい要素も採り入れました。「カラーセンスチェック」という、15色の中から、自分が着たい色の組み合わせを選ぶと、アドバイスがもらえるという機能です。

電子手帳でペットが飼えた「ペットテレパシー」

―1994年に発売した「JD-361」と「JD-360」には「ペットテレパシー」「パピーテレパシー」という愛称がついていますね。

JD-361の製品画像

「ペットテレパシー」JD-361

JD-360の製品画像

「パピーテレパシー」JD-360

この2モデルから、ペット育成機能が入りました。ペットをかわいがるのが好きな子は多いけれど、当時は住宅事情などからペットを飼えない家庭も多く、「電子手帳の中でペットが飼えたら楽しいよね!」ということで組み入れました。JD-360では犬が、361では猫も飼えました。普段は画面の中で歩き回ったり、餌を食べたりします。JD-361ではかわいい鳴き声も聞けました。

ペット育成機能の画面

画面の中で過ごすペット

ただ育てるだけではなく、データ通信用の赤外線センサーを活用して、双方向で反応が返ってくるようにしました。センサーの前で手を振ると、その回数や速さのパターンを検知して、ペットが「お手」や「ジャンプ」などの15種類のアクションをしてくれました。

―2年後の1996年には任天堂から「ポケットモンスター」が、バンダイから「たまごっち」が発売されて育成ゲームの大ブームが起きます。その先駆けだったんですね。
1995~1997年頃、日本は空前のハムスターブームになりました。1995年に発売した「カラーピッキートーク」(JD-364)では、犬と猫だけでなく、ハムスターも飼えるようにしました。その後、「スーパーグルービーネット」と呼ぶ専用通信サービスと接続できる「スーパーピッキートーク」が誕生しました。

スーパーピッキートークの製品画像

スーパーピッキートーク

―「カラーピッキートーク」以降は、タッチパネルになったんですね!
操作がキーボードから、タッチパネルとペンに変わりました。手書きの絵が描けるようになり、これが新しいコミュニケーションにつながっていったんです。そのハブになったのが「スーパーグルービーネット」というネットサービスでした。

ネットでペットのダウンロードやイラストでの交流の場を提供

―「スーパーグルービーネット」はどんなサービスですか?
最初は、ユーザーが新しいコンテンツをダウンロードできるサービスでした。
1995年にはWindows95が出てきて、大人の世界でもパソコン通信が流行し始めていました。子供用電子手帳のユーザーに向けて、新しい楽しみ方を提供するため、この年の11月に「グルービーネット」を始めました。社内にホストサーバーを置いて、当時のパソコン通信と同様に常駐の管理者をつけていました。

―電子手帳をどうやってつないでいたんですか?
「ふぁっくすステーション」という別売りの音響カプラーを使って、専用の電話番号にかけてつなぐようになってました。音響カプラーというのは、当時の固定電話の受話器に当てて「ピ~ガ~」という音でデータを送る装置です。すごく大雑把にいうと、今のWi-Fiルーターみたいなものですね。

その後「スーパーグルービーネット」にグレードアップして、スーパーピッキートークのペットの恋人や兄弟や、フェレットなどの他の動物をダウンロードできました。アイドルの情報やイラストの提供もしていました。

ユーザーからのメッセージやイラストも投稿できるようになりました。管理者が目視で絵を選んで掲載していたので、掲載できるイラストは多くても数百点が限界。全国の女の子たちが、掲載されたくて一生懸命、絵を描いてくれていました。中には「この子は漫画家か?」と思うほどの力作もありましたね。でも、あまりうまい絵ばかり載せるとハードルが高くなってしまうので、バランスをとりながらやっていたそうです。「自分の絵が掲載されたらうれしい」とか「このイラストかわいいですね」とかコメントがついて、今のSNSと同じような盛り上がり方をしていました。

子供向けワープロやシール印刷機と通信でリンク

―1994年にはジュニア向けワープロ「スーパーワープロ POPCLUB」(KW-700)を発売していますね。

KW-700の製品画像

スーパーワープロ POPCLUB

Windows95の登場で大人の世界ではパソコンブームが始まりましたが、文書をつくる主役はまだワープロでした。「大人の使っているツールを使ってみたい」という願いをかなえてあげるために、子供向けワープロを企画しました。楽しいフォーマットを使って誕生日カードやクリスマスカードがつくれる機能、特殊な見方をしないと見えないヒミツの文書が使える3D印刷、似顔絵の合成と印刷などの機能を備えていました。

―ここからキッズ向け文具のもうひとつの大きな流れ「プリント」が始まったんですね。

特に「シール」には力を入れていました。1995年には「シールコンピュータ ルーピー」(SV-100)を発売しました。これは「シール」の作成に特化したコンピュータです。ゲームで遊びながらシールがつくれるようになっていて、サードパーティのつくったゲームソフトがいくつか出ていました。

SV-100の製品画像

「ルーピー」SV-100

1997年には「プリンシェ/カラープリンシェ」を発売しました。これは付属のペンを使って手書きのイラストを描き、オリジナルのシールを印刷できるシールワープロでした。
これはかなりヒットした商品です。1998年には、年賀状などのはがき印刷ができる「プリフル」も出しています。

カラープリンシェの製品画像

カラープリンシェ

プリフルの製品画像

プリフル

「カラープリンシェ」と「プリフル」は、電子手帳「スーパーピッキートーク」で描いた絵も、通信機能を使って取り込んで印刷できるようになっていました。「ルーピー」「プリンシェ」「プリフル」を使ってつくったシールを交換するのが流行って、シール文化ができあがっていきました。

―今でも立体シールが人気ですし、シールは永久不滅の文化なんですね。

カメラと融合!自撮り写真がシールにできた「プチコレ」

―1999年にはデジタルカメラとシールプリンタを融合させた「プチコレ」(ZR-1)を発売していますね。

プチコレの製品画像

プチコレ

2000年前後にはプリクラがはやっていました。でもプリクラはゲームセンターに行かないと撮れないし、けっこうお金もかかりますよね。当時はコンパクトデジタルカメラも大流行していて、カシオも全盛期だったので「デジタルカメラとシールプリンタをくっつけて、いつでも持ち運べたら楽しいよね」と考えました。そこから生まれたのが「プチコレ」です。どこででも撮ってすぐシールにして、その場で交換できるのが売りでした。

今のスマホみたいにフロントカメラはありませんでしたが、自撮りもできました。レンズの横に小さな鏡がついています。そこに自分が映るように構えれば撮れるという仕組みでした。女子高生にも試用してもらったりしたんですが、印刷が白黒で画質も粗く、乾電池式だったのでけっこう重かった。技術面では未熟でしたが、画像とシールを結びつけて気軽にコミュニケーションできるツールとして、後の開発に活かすことができました。

最新の「NAMELAND i-ma」で多彩な楽しみ方を提供

―懐かしいアイテムの嵐でしたね。どのモデルにも遊び心を感じました。最近はラベルライター「NAME LAND i-ma」が人気ですね。

NAME LAND i-maの製品画像

NAME LAND i-ma

「NAME LAND i-ma(ネームランド イーマ)では、食べ物などのアイコン、鉄道のレールなどのフレーム、かわいいキャラクターなどをWebからダウンロードして、PCやスマホのアプリでお好みのラベルを作成できます。またクラフトテープやリボンテープなど、テープの種類も豊富なので、用途に応じていろいろなテープを使い分けられます。

文具をいろんな人に楽しんでいただきたいので、「スーパーピッキートーク」で楽しんだ平成キッズの方々など、多様な方々に使っていただければありがたいです。

―これからどんな新製品が出てくるか、楽しみですね。ありがとうございました!

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